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Olá! みんなの経済

[Part1]働き手が自ら経営




グローバル資本主義って、そろそろ限界じゃないの。世界中の人々が、そんな思いを強めている。でも、代わりにどんな形の経済があるというのだろう。そこで思い起こされるのが、スペインなどラテンの国々で出会った人たちが醸し出す、資本主義への不思議な距離感だった。その南欧や中南米で、「連帯経済」という試みが広がっているという。株主の利益を目的としない、おおらかなラテン流「みんなの経済」。その実力を探りに出かけた。


えぶち・たかし

1976年生まれ、1月までGLOBE記者



ブラジル最南部の中心都市、ポルトアレグレ。ドイツ系移民が多く、オレンジ色の花をつけた街路樹が、欧州風の町並みに映える。それが、郊外に向かうと徐々に道がでこぼこになり、焼け焦げた車が放置されている。そんな住宅街の一角で、20人ほどの女性たちが型紙を切ったり、ミシンを動かしたりしていた。


彼女たちはたまに冗談を飛ばし、大笑いしながらTシャツを縫っている。ちょっと音の割れたスピーカーから、映画「タイタニック」の主題歌を歌うセリーヌ・ディオンの声が響く。上司がいるでもなく、和気あいあいとした職場の雰囲気は、どこかでみた覚えがある。そうだ、新人記者時代に取材した、ママさんバレーチームのようなノリだ。


「ウニベンス」というこの組織、一見普通の縫製工場だが、実は会社ではなく、株主も社長もいない。働き手たちが自ら経営もする協同組合なのだ。組合員はみな、近所に住む女性たち。ミシンでTシャツを縫っていたオザナ・オリヴェイラ(48)はここで働いて9年になる。数分かけて1枚仕上げるごとに、1.5レアル(約50円)を得る。「何事もみんなで相談して決めます。時間の自由もきくし、自分のできる範囲で仕事ができる。ずっとここで働きたい」


話を聞いているうち、昼前だというのにみな帰り支度を始めた。11時にいったん工場を閉め、それぞれ家に帰って昼食を取る。作業開始は2時間後だ。



工賃は話し合いで


リーダー役のネルザ・ファビアン・ネスポロ(53)がウニベンスを始めたのは約20年前。働いていた食品工場から解雇され、自宅で服を縫って生活費の足しにしていた。似た境遇の人たちと一緒に仕事をしようと組合を作った。丁寧な仕事ぶりが評判になり、コンスタントに注文が入るようになった。


作業ごとの工賃は、全員で話し合って決める。組合員たちは月に1000~2000レアル(3万5000~7万円)ほどの給料を得る。のこった「利益」は、新しい機械を買ったり非常時の蓄えにしたり。「同じコミュニティーの人たちだから意見がまとまりやすい。仲間を増やしたとしても、せいぜい30人ね」とネスポロは言った。


連帯経済は、国家でも市場でもない、コミュニティーに基づく経済だという。それがもっとも盛んだと聞いてブラジルまで来た。しかし、一つひとつが小さいままでは経済の仕組みを変えられないのでは。そうネスポロに問うと、「互いにつながることで、網の目のように広げていこうと思います」と言い、隣の建物を案内してくれた。


そこには、自然な風合いの生地のTシャツやワンピースが山積みになっていた。「ジュスタ・トラマ」というブランド。それが彼女らの連帯経済の軸になっていた。Tシャツなら1枚40レアル(約1400円)ほどの値札がついている。


オーガニック素材を売りにして、農場で有機綿を栽培するところから、糸や布の生産、縫製、販売まですべてを連帯経済の組織が担う。ウニベンスなど6組織の計600人が携わるという。なかなかの規模だ。


(文中敬称略)

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