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デザイン思考が変える

[Part3]広がるデザインの役割



ヘレンハムリンセンターのラーマ・ギーラオ所長
photo:Nakamura Yutaka

デザインとは何か。「1%のひらめきと99%の汗」との名言を残したとされるトーマス・エジソンなら、なんと答えるだろうか。デザイナーの根津孝太は「『1%のひらめき』は技術者の範疇ではないでしょうね」と言う。


いまデザインが脚光を浴びるのは、この「1%のひらめき」をデザインに頼る動きの表れでもあるだろう。いっぽうデザイナーは、そのひらめきを社会の中に求め、社会の抱える課題と向き合ってきた。その一つが、デザインの恩恵を受けられない人々を救う試みだ。


身体障害者が使いやすいように特殊な改造を加えたり、障壁(バリアー)を除去したりするバリアフリーデザインが広く知られるようになったのは1970年代のこと。90年代になると、米国で車いすの建築家ロン・メイス(故人)が障害者のためだけに限らない汎用性のあるデザインを目指すユニバーサルデザインを提唱した。本編1のpart4で紹介したシャンプーボトルの凸凹や新しい詰め替え容器はその一例といえる。



インクルーシブデザイン


英国では94年に社会運動家のロジャー・コールマンがインクルーシブデザインを提唱した。デザインから排除されている人々として当初から高齢者や外国人、貧困層などに注目した。また、デザインを必要とする人々にデザインを作り出す過程に参加してもらう方法にも特徴がある。


コールマンがインクルーシブデザイン普及のため99年に英・王立芸術大学院に創設したヘレンハムリンセンターの現所長、ラーマ・ギーラオは「革新をもたらすひらめきは、デザイナーだけのものではない。新しい発想は、デザインの恩恵を必要とする人々とともに考えることから生まれるのです」と話す。


高齢化社会を迎え、何らかの障害とともに生きる人々が少数者ではなくなりつつある。そんな時代にあらゆる人々を包摂(インクルーシブ)しようとするデザインのアプローチはいっそう重みを増している。エジソンがその発明によって私たちの生活を変えたように、デザインは単なる意匠にとどまらない役割を担っている。


(中村裕)

(文中敬称略)


取材にあたった記者

中村裕(なかむら・ゆたか)

1967年生まれ。スポーツ部、週刊朝日などを経てGLOBE記者。面白くわかりやすい記事を目指すためには私もデザイン思考が必要と納得。

高橋友佳理(たかはし・ゆかり)

1982年生まれ。青森総局、社会部などを経てGLOBE記者。いままで物欲がなかったが、商品に隠された物語を知り、欲しいモノが出てきた。


静物写真

小寺浩之(こでら・ひろゆき)

1965年生まれ。雑誌編集者を経て、静物写真の世界へ。日本写真家協会会員。



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