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デザイン思考が変える

[Part4] 「やさしくエコ」で売り上げアップ



ローレットと呼ばれる滑り止めの溝のある部分(指の腹がひっかかる部分)とない部分(指の腹が入り込む部分)の二つをあしらうことで、より確かなグリップ感を与えることができる

デザインを変えるだけでお年寄りに優しく、環境への負荷も減らすことができて、おまけに売り上げも伸びた。そんな「うますぎる話」が身近な日用品の中にある。昨年1月、花王が「エッセンシャル」ブランドのシャンプーとコンディショナーの詰め替え容器を新しくしたところ、中身が変わらないのに半年間で売り上げが5割伸びた。原料も減らしてCO2の削減にもつながった。


秘密は容器の形だ。従来のパウチ(袋)と比べると、素材はそのままでボトルの形状となり、注ぎ口が端から真ん中に移った。フィルムを手でちぎるのではなく、キャップをひねって開ける仕組みになっている。実際に詰め替えてみると、キャップは濡れた手でも開けやすく、真ん中にある注ぎ口が空ボトルのノズルにぴたりとはまり、床に置いてもぐらつかない。両手が使えるし、フィルムも薄くなって絞りやすくなった。


同社によると、ボトルの形にすることで詰め替え液をぎりぎりまで入れられるので小型になり、表面積は35%小さくできた。また、置いたときの安定感が増したので、使うフィルムも18%薄くできた。結果として、CO2の排出量を3%減らせたという。

ラクラクecoパック
左の従来品は袋の上部をシールするため容量の7割ほどの液体しか入れられなかったが、ボトル状にしたことで9割入るように。同じ340ml入りでも、小さく持ち運びや収納も便利になった
photo:Kodera Hiroyuki



詰め替え容器と地球環境

花王がシャンプーやリンスといった粘りけの強い液体にも詰め替え商品を導入したのは1996年。この20年でパッケージの大幅なモデルチェンジを6回行った。使いにくいという消費者の声に応えると同時に、詰め替え容器の普及でCO2排出量の大幅な削減が期待できるからだ。


花王が製品パッケージの生産に使ったプラスチック量を示したのが左のグラフだ(詰め替えや付け替え商品を導入したブランドに限る)。95年以降、生産本数は約2倍になったにもかかわらず、使用量は減っている。仮に詰め替え商品の導入やボトルの小型化をせずに現在と同じ本数が売れた場合と比較すると、7割減の計算になる。


花王の包装容器開発研究所室長、稲川義則は「使いやすさだけを求めたら、材料を多く使ってしっかりした容器をつくればいい。使いやすさとエコをいかに両立させるかが課題でした」と振り返る。



こだわりわからなくていい


ただ、こうした取り組みは1社だけでは効果が薄い。同社広報部の武田葉子は「似て非なるものが流通すると普及の妨げになるので当面は特許を保有します。でも、ゆくゆくは他社にも使ってもらい世の中に広めたい」と話す。先例もある。シャンプーとリンスなどを区別するボトル表面の凸凹は、発案した花王が実用新案を放棄して他のメーカーに導入を呼びかけたので、当たり前になった。


良いデザインとは何か。室長の稲川は「わかりやすさ、使いやすさ、安全性を備えたもの。何の説明も要らず使ってうれしいもの。設計者のこだわりがどこにあるのかわからないくらいがいい」と説明する。その言葉は、商品として市場を目指すデザインと、美術館を目指すアートとの違いを教えてくれる。


(中村裕)

(文中敬称略)

本編2へ続く




「やさしくエコ」の秘密

撮影:中村裕、機材提供:BS朝日「いま世界は」




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