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トランプがきた

[Part3] 「負けたのは、知識層だ」/橋下徹






「ポピュリスト」と呼ばれた政治家が日本にもいた。2008年から8年弱、大阪府知事、大阪市長を務めた橋下徹(47)。知事就任直後に府職員を「破産会社の従業員」と呼び、市役所を「税金をむさぼるシロアリ」と批判した。トランプと同様、巧みに「敵」をつくり、過激な言葉を発信しながら有権者の支持を得てきた彼が、欧米に広がる動きをどう見るのか。GLOBE編集長の国末憲人が聞いた。




国末 トランプの勝因は何でしょう。

橋下 専門家は細かく考えすぎなんですよ。民主政治というのはただ1点、有権者の過半数の満足を得ていくというきわめてシンプルな話。これまでの政治に満足している人は継続を支持しますが、オバマ政権に不満がある人は変化を求める。トランプは有権者の不満をうまくすくいあげたんでしょう。


国末 トランプを見ると「ハーメルンの笛吹き男」を思い出します。不満をすくいあげて支持者を集めるのは得意ですが、どこへ連れていくのか心配です。

橋下 その国の民主主義のレベルにもよると思いますけど、アメリカくらいの国になれば、1人の政治家に国全体がどこかに連れていかれるなんていうことは絶対ないですよ。政治家の資質で一番重要なのは、課題を見つけられるかどうか。先日取材した民主党の下院議員は、言葉は上品だがアメリカの課題認識が全くない。不法移民の問題、イスラム過激主義の問題、ロシア・中国との関係、日本を軍事的に支援するのかなどについて、正面からは何も答えないんです。トランプはその議員に比べれば超下品ですが、アメリカの根幹の課題を直視している。国末さん、具体的にトランプのどの言葉がダメなんですか。


国末 たとえば、「イスラム教徒を入国させない」と言って、宗教でひとくくりにして攻撃しました。

橋下 宗教の自由は重要ですよ。でも、イスラム思想を持った一部の人が過激主義に走っているという現実があるじゃないですか。イスラムを全部排斥するのはダメだけど、イスラム過激主義が国に入ってこないように対応することは国家運営にとって必要不可欠です。それがテロ対策です。逆に仏週刊紙シャルリー・エブドがやった行き過ぎたイスラム侮辱表現を止めるべきです。ところが上品な人たちは、それを表現の自由として許します。おかしいですよ。


国末 トランプのような発言は分断や憎悪を広げるのではないでしょうか。

橋下 アメリカ社会には分断はすでにあったんです。トランプはそれを正直に見せただけ。アメリカは多民族国家ですから、ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)は必要ですよ。でもそれをやりすぎると、政治家も有権者も本音を言えない社会になり不平・不満が鬱積して社会の分断が生じます。


国末 ただ、橋下さんは民主主義では過半数を取ればいいという。トランプも同じ立場でしょうが、51を取って49は切り捨てればいいのでしょうか。

橋下 勝つためには過半数をとらなきゃいけないですけど、選挙の後はそんな政治はやらないですよ。


国末 かつて政治家の条件だったポリティカル・コレクトネスを、尊重しない人が出てきている。なぜでしょう。

橋下 有権者が政治家のきれいごとにおかしいと思い始めてきたんですよ。口ばかりで本気で課題解決をしない政治に。米国で言えばワシントン、英国で言えばウェストミンスターの中だけで通用するプロトコル(儀礼)できれいごとを言っても、それは明日のメシを満足に食べられる連中だから。ポピュリズムという言葉で自分たちと異なる価値観の政治を批判するのは間違っています。それは自分の考え以外は間違いだと言っているだけ。民主政治の本質は大衆迎合です。重要なのは、社会の課題を解決する力。エリート・専制政治の方が大衆迎合よりもよほど危険なことは歴史が証明しています。今回の選挙の敗北者は、メディアを含めた知識層ですよ。


国末 トランプが今後つまずくとすると、どういう局面ですか。

橋下 言ったことをできなかったときですね。課題を突きつけて、今度は組織を動かして課題を解決しなきゃいけないんですけど、それができなかったとき有権者から総スカンを食らうでしょう。


国末 失礼な言い方だが、トランプは成り上がり者。橋下さんも庶民の出身。ポピュリストたちはみんなそうです。だからこそエリートの嫌な面が見えるのでしょうか。

橋下 明日のメシに苦労せず、きれいごとのおしゃべりをして、お互いに立派だ、かっこいい、頭がいいということを見せ合っているのが、過度にポリティカル・コレクトネスを重視する現在の政治家・メディア・知識人の政治エスタブリッシュメントの状況じゃないですか。そんな連中に社会の課題が分かるはずがない。政治なんて、もっとドロドロしたものなんです。僕はポピュリズムというものは課題解決のための手段だと思ってます。メディアの仕事は、下品な発言の言葉尻を批判することではなくて、政治家のメッセージの核を見つけて分析し、有権者にしっかりと情報提供することですよ。


国末 また政治に戻るんじゃないですか?

トランプみたいに70歳くらいで。

橋下 いやあ、それはないです。知識人として無責任にしゃべる方がいいです(笑)。


(構成・左古将規)


はしもと・とおる

1969年生まれ。弁護士。テレビ朝日「橋下×羽鳥の番組」(毎週月曜午後11時15分~、一部地域を除く)に出演中。米大統領選や英国のEU離脱国民投票を現地で取材した。

インタビュー詳報はこちらから

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