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人前でうまく話すには

[Part1]ニッポン特有の問題


福沢諭吉がスピーチを「演説」と訳して1世紀以上。なのに日本ではいまだに、人前でうまく話すための技術がなかなか広まらない。なぜだろう。


約5年前に発足した日本プレゼン・スピーチ能力検定協会の理事長、荒井好一(68)に聞いた。「小中学校でいきなり人前で話しなさいと言われ、アガって失敗した痛い経験しか積まず、トラウマばっかり抱えているからですよ」。まさに、私だ。


広告会社を役員定年した2009年、荒井はソーシャルメディア「mixi(ミクシィ)」で若い会社員たちと交流し、思った。「知識も教養もすばらしいのに、人前で意見を言うとなると臆する人が多い」。自身のプレゼン経験をもとに教え始め、協会を立ち上げた。


日本では度胸や経験が大事と言う人も多いが、「下手なまま場数を踏んでも、聴くにたえない場合がほとんど」と荒井は言う。たしかに、校長先生の朝礼のあいさつも結婚式で聞いた新郎新婦の上司の祝辞も正直、退屈なものが多かった(苦手だと言っている私が、本当に申し訳ありません)。しかも、えらい人だけに、指摘はされにくい。


協会の講座にお邪魔すると、「来たからには藤さんも発表を」。では米国流が受けるか試してみよう。リチャードの教室での発表を日本語で実演してみた。だが、聞いてくれた受講生たちは戸惑ったような表情。荒井さん、どうでしょう。「ちょっとドラマチックすぎるかな」



えぇっ、そんな。毎週リチャードのもとへ通っている努力はいったい……。


日本の企業経営者らに教えるスピーチライター、蔭山洋介(35)に聞いてみた。「言語は文化そのもの。美的感覚は日米で全然違う。『強い私』を日本人がぶつけると、無理をしているように見えて、強烈な違和感を与えるのではないでしょうか」


では、どう変えたらいいのか。「説得力があるように原稿を書き、話し方も考えるという点では日米に大きな違いはない。でも米国ではレディー・ガガ風に仕上げても、日本ではきゃりーぱみゅぱみゅ、またはユーミン風にするといい」


会社員は終身雇用が当たり前ではなくなり、転職や勤め先の合併で、見知らぬ上司や同僚と突如机を並べることも増えた。なんでも「以心伝心」とはいかなくなっている。「新しいコミュニケーションを支える技術の一つとして、日本でもスピーチ術が開発されないといけない」と蔭山は言う。



(藤えりか)

(文中敬称略)

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