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義肢装具

[Part1]「身体拡張」の倫理的問題




ベルトルト・マイヤー独ケムニッツ工科大学教授
photo;Iwaborri Shigeru

──その義手はとてもスムーズに動きますね

英国タッチバイオニクス社の「i-limb」(日本未発売)だ。500万円以上する製品で、ドイツでは保険適用になるが、そうでなければとても支払えない。


──ほかの義手も持っているのですか

オットーボック社の筋電義手もあるが、スポーツの時しか使わない。装飾用義手もあるが、何か自分が隠さないといけない感覚に陥る。それはおかしい。隠すことで同情もされたくない。


──i-limbの筋電義手で生活が変わりましたか

気づいた人が「かっこいい、見せて」と言ってくるようになった。機能的効果に加えて、ハンディキャップを感じなくなるという心理的効果があった。自分の障害を、自分にしかない個性ととらえるようになった。障害は欠陥ではなく、社会が要求することと、その人が出来ることがマッチしないだけのことだ。


──義肢装具の進化で人間の身体機能が広がりました。教授は倫理面の問題を指摘していますね

これまでの義肢装具は、失った身体機能を回復するツールだった。だが、技術革新はめざましく、数十年もすれば技術はさらに発達し、生まれつきの身体能力を超える機能が身につくことも可能になるだろう。つまり、「生身の人間よりも義肢のほうが高機能になる」という倫理的な問題が生じうる。自分の手足以上の機能が欲しいから、手足を切って最先端の義肢装具をつけて欲しいという人が現れるのではないか。


──生まれつき障害がある我々にとって、そんな行為は考えたくもありません

だが、こうした問いかけにいまの人間社会は回答を出せていない。そうした行為が許されるのかどうかを考えなければならない場面が、そう遠くない将来に現実になるのではないか。


失った手足の治療行為を経ても健常者を超えられるわけじゃないし、これまでの義肢装具の考え方も身体機能の「拡張」ではなかった。だが、ハイテク義肢装具の普及で身体機能の高機能化が進めば、多くの人には当たり前の行為が「普通」以下の行為になる。すると、そのことが「障害」になる。これは問題だ。


──ハイテクが進むと、義肢装具をハッキングされて身体を操作される恐れはありませんか

私の「i-limb」は6個のモーターを搭載し、無線通信「ブルートゥース」が組み込まれているので、筋電で動かすのに加えてiPadから遠隔操作もできる。パスワードや製品番号がわかれば、他者が乗っ取って遠隔操作する「ハッキング」も理論的には可能だ。とはいえ、番号は教えないし、それこそ義手を外してしまえば何ら問題ない。心配はしていない。


(聞き手・岩堀滋)








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