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トイレから愛をこめて

[Part4]災害時、トイレはどうなる?専門家と歩く/日本






体育館脇の古いトイレをチェックする目黒星美学園の女子生徒ら
photo:Sugizaki Shinya

今後30年以内に70%程度の確率で起こるとされる首都直下地震。避難所、水、食料と同様に大切なのがトイレだ。


災害時のトイレの重要性がクローズアップされたのが1995年の阪神・淡路大震災だ。断水などでトイレが使えなくなる事態が続出した。2011年の東日本大震災でも、避難所のトイレは厳しい状況に置かれた。「水洗トイレの水が流れず、大きなペットボトルに水をためて使った」。訪問ボランティアナースの会「キャンナス」の一員で看護師の安西順子(57)は言う。安西は発生9日後に避難所となった宮城県気仙沼市の体育館に入った。「持ち去られるからとトイレにせっけんもない。ノロウイルスなどの感染症も流行していた」という。


避難所となる場所の9割は、大人数を収容できる公立学校施設だ。国は水洗トイレが使えなくなる事態を想定し、自治体に仮設トイレの整備を求めている。


ただ、仮設トイレの多くはプライバシーがなかったり、不便な場所に設置されたりと使いにくいのが現状だ。11年の震災でも、トイレを我慢するため水分摂取をおさえ、避難者が「肺塞栓(そくせん)症」(エコノミークラス症候群)になったとみられる事例が報告された。文部科学省の調査では、避難所となった学校で「トイレが問題」としたのは7割以上に上った。





行きたくなくなるトイレ


災害時、避難所でどんな問題が起きるのか。8月上旬、災害トイレの普及啓発を進める「日本トイレ研究所」代表理事の加藤篤(43)に同行を頼み、都内の小学校を訪れた。住宅街にある築50年ほどの学校で、約800人を収容できる。被災地の支援活動をきっかけに災害トイレの啓発に取り組む目黒星美学園(東京都)の女生徒3人も加わってもらった。


この日午前10時の東京都心の気温は34度近く。外でトイレを待つだけで倒れそうだ。


災害時は水洗トイレが使えなくなる可能性が高い。そんな時は、マンホールのふたを開け、上に簡易便器などを取り付ける「マンホールトイレ」の出番だ。この学校では避難所となる体育館の脇に和式1、洋式3、車いす用1の計5基用の穴がある。ふたを開けると直径40センチほどの穴が地中に向けて徐々に狭くなっており、子どもが落ちる心配もなさそうだ。加藤は、「過去の例では学校に人がいない時に地震が起きた。設置の仕方を知る人がいないかもしれない」と指摘。中3の上高優香(15)も「ふたのかぎの場所もわからない」と戸惑う。住民も交えての日頃の訓練が必要だと感じる。


この学校には、ほかにも2カ所の屋外トイレがある。一つは車いすの人も使えるよう昨年改修されたが、高1の川内菜々子(16)は「段差があるし、一部は車いすで通るのが難しそう」と言った。


校内のトイレは和式が多い。高2の林垣菜美(16)は「家と違うトイレは極力避けたい」と言う。だがマンホールトイレは仕切りがテントだけで、プライバシーの問題がある。汚い和式か、テント仕切りの洋式か。女子生徒3人の意見は分かれ、加藤は「究極の選択。避難した人はトイレに行かないよう、極力水を飲まなくなる」と話した。女性にとって屋外トイレは防犯上の懸念もある。


加藤は、「重要なのは、行きたくなるトイレをつくること」だと言う。トイレへの障害となる距離や段差、プライバシーの問題を解決するのだ。安心してトイレに行けるために何が必要か。普段から考え、備えておきたい。


(杉崎慎弥)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)




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