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トイレから愛をこめて

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[Part2]男子もオール個室に/大分






休み時間にトイレ前のベンチで談笑。手を洗いながらおしゃべり……。大分県九重町の「ここのえ緑陽中学校」の風景だ。1年の男子生徒、佐藤主理(12)は「トイレは友だちとちょっとした会話をする場所」と話す。20年以上前、学校トイレの個室に入るだけではやし立てられた記者の子ども時代とは大違いだ。


学校の設立は2年前。町内の四つの中学校を統合してできた。男子トイレも全て個室で、各学年の教室の前に男女一つずつある。個室の半数にはプライバシー配慮の擬音装置までついている。


全個室化に加え、旧式との最大の違いは、水を流して掃除するタイル張りの「湿式」ではなく、細菌の繁殖や臭いを抑える素材を使った「乾式」のフローリングになったこと。生徒会長の穴井希実(15)は「掃除も苦にならない」。校長の濱田淳(59)も、「卒業生が、中学のトイレが良すぎて、高校で使えないとまで言う」と話す。


新校舎の総事業費は約15億円。多くを自主財源でまかなった。トイレの建設費は3000万円ほどで、町教育長の古後粒勝(67)によれば「通常の2~3割増し」だという。保護者からは「トイレより教材などにお金をかけるべきだ」といった反対意見もあったが、古後は「家のトイレがきれいなのに、学校が汚くては生徒がギャップに苦しむ」と反対者を粘り強く説得した。古後はかつて保護者から、「学校のトイレに行きたくないという理由で子どもが朝食を食べない」という悩みを聞いていた。統合前の中学校で、老朽化したトイレを生徒が使いたがらない雰囲気もあったという。


だが、全国をみれば緑陽中のような学校ばかりではない。自治体予算が限られる中、統廃合のようなきっかけや、学校関係者らのイニシアチブがなければ、なかなかトイレ改修にまで踏み切れないのが実情だ。学校施設の改修で、耐震化が優先されてきた背景もある。


だが学校の多くは1960?70年代に建てられ、老朽化が進む。文部科学省によると、学校教員が最も不満を抱える施設はトイレを含む「水回り」との調査結果(2008年)があるという。日本トイレ協会会長の高橋志保彦(79)は「暗い・怖い・臭い・汚い・窮屈・壊れている。学校トイレの『6K』は日本のトイレに残された大きな問題だ」と指摘する。


(杉崎慎弥)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)





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