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着物に明日はあるか?

[Part7]男が着物を着るとき/江渕崇









真っ先に着物を捨てたのは男たちだった。まずは公の場で洋服に駆逐され、今では家の中でも着物を着る男がほとんどいなくなってしまった。東京・六本木の着物店「awai」支配人、木下勝博さん(43)は「細分化した女性の着物に比べ、男は自由に着てもいいはず」。


普段から着物で過ごす木下さんは、飲食店で良い席に案内されるなど「特別扱い」の日々だとか。これは着ないわけにはいくまい。さっそく着方を教わった。


「羽織はジャケット、着物はシャツ、帯はネクタイだと思って下さい」。黒に近い焦げ茶のスーツ地の着物に、帯は鮮やかな水色の博多織を合わせてみた。足袋や半襟を選ぶ時間も楽しい。


帯は3回練習したら自分で結べるようになった。驚いたのは、ふんどしの爽快さである。まだ少し寒いが、これからの季節にはぴったりだろう。肌と布、布と布の間に空間が多い着物は、湿度の高い日本の風土に合っていると実感する。


着物姿で外に出ると、街が前とは違って見えた。背筋がすっと伸び、姿勢が良くなったからだろうか。そば屋で久しぶりに会った同僚は「背が伸びた?」。チラ見の視線にもすぐ慣れた。


仕事でも着たが、デスクワークで袖が少し気になる程度で、人に会えばすぐ覚えてもらえそうだ。ただ、混んだ電車で足袋を踏まれたのはかなり痛かった。


現代の暮らしは、洋服の方が楽で便利な場面が確かに多い。けれど、きっかけさえあれば着物を選ぶ男性も結構いると思う。「着物の明日」への突破口は、これまで脇役にとどまっていた男着物の革新にあるのかもしれない。





えぶち・たかし

1976年生まれ。

インドネシアのナショナリズムで卒論を書いた。




(今回の「編集長から」は「着物と日本酒」です)





取材にあたったもうひとりの記者



左古将規(さこ・まさのり)

1976年生まれ。

着物は着た記憶もないし、着る予定もない。日本男児失格でしょうか。







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