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メンタルヘルス

[Part3]欠勤、失業、世界経済に影響







心の健康が、職場を中心に脅かされている――。そんな危機感が世界に広がっている。


日本では1998年から14年連続で自殺者数が3万人を超え、過労自殺が社会問題になった。うつ病や躁うつ病と診断された人は2008年に100万人を突破。ほぼ10年で2倍以上に増えた。


欧米でも職場のストレスが深刻だ。08~09年、仏通信大手フランス・テレコムで従業員30人以上が自殺したと報道され話題になった。ドイツでは11年、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」が流行語になった。


産業医として30年以上のキャリアがある英通信大手ブリティッシュ・テレコムの主任医務官、ポール・リッチフィールドは「30年前、職場の健康問題といえば、アスベストや騒音や振動による影響だった。今、働き方はガラリと変わった。09年以降の欧州経済危機の影響で、心理的なプレッシャーは厳しさを増している。欧州の企業にとって最大の健康問題はメンタルヘルスだ」と指摘する。


仕事のストレスが一因となりうる代表的な心の病が、うつ病だ。


気分が落ち込み、何をしても楽しくなくなり、夜も眠れず、死にたくなる人もいる。そんなうつ病が2030年には、世界の人々の健康を害する最大の病気になる、と世界保健機関(WHO)は予測する。







予防も治療も手探り


10~20代で発症することの多い統合失調症と異なり、うつ病は働き盛りの中高年もなりやすい。経済への影響も深刻だ。


うつ病などで仕事を辞めれば、国が失業給付や障害給付を支払う。経済協力開発機構(OECD)によると、障害給付の支出額のうち心の病の患者の分が占める割合は09年にデンマークで44.2%、08年にスウェーデンで41.2%に上り、90年代半ばからほぼ倍増した。医療費に占める心の病の割合もフランスで6.6%(98年)から13.5%(02年)に、ドイツで4.8%(02年)から17.4%(06年)に増えた。


心の問題が原因で、欠勤したり、出勤できたとしても十分に能力を発揮できなかったりすることもある。そんな人たちの数は、重い症状の心の病で職場を離れる人よりもさらに多く、障害給付や医療費などの直接的な支出以上に大きな経済損失とも言われる。


ただ、心の病については、原因や仕組みに不明な点も多く、「病気」と「健康」の線引きが難しい。予防も治療も手探りの状態が続いている。


今回の特集では、世界経済に大きな影響を与える職場のうつを中心に、世界と日本の心の健康を探った。





(左古将規)

(文中敬称略)

本編2へ続く)


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