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動物園、来てみる?

[Part4]シャチ5億円、ライオン40万円/動物のお値段






illustration:Abe Hiroshi

1頭5億円。名古屋港水族館(名古屋市)が和歌山県太地町立くじらの博物館から2010年、メスのシャチを購入した値段だ。「最近の動物の取引では最高水準」(動物園関係者)と話題になった。動物はどれくらいの値段で、どのように取引されるのだろうか。


取引で最も多いのは、動物園同士のやりとりだ。繁殖や研究を目的に無償で貸し出したり、ほかの動物と交換したりするケースが多いが、名古屋のシャチのように売買されることもある。お目当ての動物が見つからない場合は、動物の取引を専門に行う「動物商」に声がかかる。


日本にある動物商は約10社。国内外に独自のネットワークを持ち、それぞれ得意とする動物があるという。動物商の業界に入り約50年になる「アイ・アイ」(横浜市)社長の大矢秀臣(71)は今年、南米原産のラクダの仲間、アルパカを18頭、米国から仕入れた。1頭170万~200万円。キリンに強い大矢によると、今年は同じく米国から5頭のキリンが輸入された。相場は1頭1800万円という。


動物の値段は、入手の難しさや輸送のコスト、大きさ、飼育の難しさなどによって決まる。繁殖を目指す場合は、近親交配を避けるために血統も重要だ。人気のある動物の値段は、ここ20年ほど右肩上がり。キリンは3~4倍、ホッキョクグマは10~20倍に跳ね上がったという。国内でも1999年にオランウータンの密輸事件が摘発されるなど、希少動物の密猟、密輸も後を絶たない。



価格が高騰する背景には、国際的な取引の規制がある。ワシントン条約により、希少な野生動物を動物園に連れて来ることは難しくなった。動物園にいる個体を買う場合、人気種には世界中から注文が殺到する。加えて、中国で動物園の新設や拡大が相次ぎ、「高額な値段で動物を次々と買い付け、値段がつり上がった」(大矢)。いま、大矢のもとには、国内の動物園から「ホッキョクグマがほしい」という注文が7件入っているが、「世界中の動物園が、うの目たかの目で狙っており、簡単には手に入らない」。




そのホッキョクグマを3年前、静岡の日本平動物園に5969万円で納入したのが、動物商「レップジャパン」(静岡市)の白輪剛史(45)だ。タイの動物園から仕入れたが「綱渡りの連続だった」。


納入の半年ほど前、中国の動物商と電話でホッキョクグマの話題になり、「心当たりがある。高額だが手に入る」と水を向けられた。白輪が関心を示すと「情報料は5万ドル(約500万円)」との返答。数週間の押し問答の末、中国人はホッキョクグマはタイにいると明かし、「現地で合流して実物を見よう」と打診してきた。タイの動物園事情に精通する白輪も知らない情報だった。


半信半疑で赴くと、バンコク郊外のサファリパークに連れて行かれた。ホッキョクグマが4頭、ガラス張りのプールで悠々と泳いでいた。「動物の取引は水物。どこに何がいるか分からないと痛感した」と白輪。残りのクマはその後、すべて中国の動物園が買い付けたという。


動物商たちは「難しさは増しているが、お金と時間さえかければ、ほとんどの動物は手に入る」と話す。ただ、日本の動物園は、高騰する相場についていけず、簡単に動物を買えなくなっている。入場者数が日本有数の動物園長は「いまの相場は異常だ」と漏らす。


白輪は東南アジアや中国、中東の動物園との取引が増え、いまでは全体の6割を占める。「日本の市町村が営む小規模な動物園が、勢いのある新興国の動物園に対抗するのはますます難しくなっていくだろう」と語る。


(内田晃)

(文中敬称略)

本編3へ続く)





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