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動物園、来てみる?

[Part3]ゾウ、ゴリラ・・・人気者が消える日






illustration:Abe Hiroshi

ゾウやゴリラといった人気者が、日本の動物園からいなくなるかもしれない。動物の高齢化が進み、国際取引が制限されて新たな入手も難しくなっている。


日本動物園水族館協会は2011年、主な動物の年齢や寿命などをもとに、新たな対策を打たない場合に30年にどこまで減るかを予測した。数字は衝撃的だった。アフリカゾウは10年の46頭から7頭に、ラッコは34頭から10頭に、ニシローランドゴリラは23頭から6頭に減るとの結果が出た。


希少動物の国際取引は厳しく制限され、価格は高騰している。人気者が減るペースを落とすには、園同士で動物を貸し借りし、複数で飼って増やすしかない。


5月、東京の上野動物園に、仙台市の八木山動物公園からスマトラトラのオス「ケアヒ」がやってきた。国内で唯一、繁殖実績があり、上野のメス「マニス」との繁殖が期待される。野生のスマトラトラは約400頭に減り、動物園でも世界で300頭、日本に14頭しかいない。


ケアヒは東日本大震災直後の11年4月、米ハワイから仙台に来た人気者で、「普通ならとても外に貸せない」(飼育展示課長の阿部敏計)。昨年5月、赤ちゃんが4頭生まれ、上野行きが決まった。


人気者の貸し借りは簡単ではない。目玉の動物がいなくなれば、来園者が減りかねず、送り出す側の抵抗は強い。各園の判断や善意に頼るしかない。




巨費を投じて飼う意味あるのか


海外から借りるのも難しい。日本の動物園は、飼育場所が狭くて繁殖に不向きだとの評判が根強いからだ。10年、世界中の動物園のスマトラトラを増やすための会議がインドネシアで開かれた。メス1頭がいる名古屋市の東山動物園に、米国からオスを貸し出せるかも議題に上ったが、見送られた。関係者によると、東山の施設は「自然の生態に似せたつくりではない」と厳しく評価された。


成功例もある。レッサーパンダだ。1990年に100頭ほどだったが、小型で貸し借りしやすいこともあり、約260頭に増えた。世界の飼育頭数の4分の3を日本が占める。「海外の希少動物と交換するカードに」との期待も出ている。


人気動物がいなくなり、巨費を投じて海外の動物を飼う意味を市民が考え始めた例もある。札幌市の円山動物園では07年にアジアゾウの花子が推定60歳で死んだ。「ゾウがいないと寂しい」との声が上がり、署名も3万人分集まった。


ゾウを飼うにはゾウ舎を建て替える必要がある。繁殖のため、最低でもメス2頭、オス1頭の「群れ」で飼うことも求められる。動物園でつくる国際団体の基準では、300平方メートルほどの今の飼育場は10倍以上に広げなければならない。飼育展示課長の柴田千賀子(49)は「それでも欧州の園よりけた違いに狭い」。


新施設には20億円超かかり、光熱費やエサ代も毎年2000万円いる。いまも年2億円の赤字で、さらに税を投じて飼うかどうか。12年の市民アンケートは、4739の回答のうちほぼ半分の2273人が「賛成」。「子どもに驚きと感動を与える」との声が多かった。ただ、「反対」も1228人いた。


市は年内にもゾウを飼うか決める。タイやミャンマー、ラオスの飼育施設を昨年回った柴田は「ゾウは宝物」として手放したがらない雰囲気を強く感じた。飼うと決めても、入手できるか分からない。


「どこに行っても、おなじみの動物を見られる、という今の姿は変わる。園ごとに種を限定して、日本の動物の保全を柱にする形になる」。上野動物園でトラやゴリラの繁殖に取り組む堀秀正(49)は、こうみている。


(江渕崇)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


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