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動物園、来てみる?

[Part1]旭山の成功 全国に波及





[静岡・日本平] プールへ豪快なダイブを繰り返すクマと、一瞬目が合った/photo:Ebuchi Takashi


日本の動物園も変身中だ。動物本来の行動を見やすく工夫した旭山動物園(北海道旭川市)の成功が刺激になった。


円柱形の水槽を上下に行き来するアザラシ。すぐ隣では、ホッキョクグマがプールにダイブを繰り返す。旭山動物園が人気を集めるきっかけとなった「あざらし館」や「ほっきょくぐま館」を一つに合わせたような施設が、日本平動物園(静岡市)にある。来園者は「アザラシと目が合った」などと歓声を上げる。

日本平は2013年4月にリニューアルオープンした。園内の半分以上の施設を6年がかりで建て替えた。開園した1969年度の83万人をピークに入園者は減り続け、04年度には44万人に。施設は老朽化し、改修構想も市の予算不足で何度か立ち消えになった。03年に旧清水市と合併したことで計画が動きだす。


飼育担当課長の柿島安博(54)は、当時すでに全国的な人気を博していた旭山を「かなり意識した」という。マネはやめるべきだという声も園内にあったが、独自の工夫を加えることで「さらに上を目指すことにした」。


ホッキョクグマが泳ぐのを真下から見えるようにしたり、そのエサになるアザラシの水槽と透明なアクリル板で仕切って緊張感を表現したり。ペンギン館やオランウータン館も新築した。66億円をかけた大改装で、13年度の入園者は改装前より6割増え70万人を超えた。


高度成長期に全国の自治体がつくった動物園は、多くが建て替え時期を迎える。旭山には「施設の図面を分けてほしい」との要請が次々に来る。「金太郎アメになってきた」との自嘲も漏れる。




「観客の反応が動物の能力を発揮させる」



[旭川・旭山] 新たにオープンした「かば館」では、水中で暮らすカバのしぐさが下からも丸見え/photo:Ebuchi Takashi

その旭山は、昨年11月に「きりん舎・かば館」をオープン。深さ3メートルの水槽に潜ったカバが軽やかに水面へと跳びはねる様子や、水の中で昼寝する姿を、上下や真横から見ることができる。 今後はすでにある動物舎に細かく手を加えていく。園長の坂東元(53)は、動物と観客の距離が遠くなりがちな欧米流の「生態展示」とは別の道を模索する。「観客の反応、動きが動物の刺激になり、本来の行動や能力を発揮させる。この方向性を変えるつもりはない」







大阪のど真ん中にアフリカ再現

[大阪・天王寺] ネコのようにじゃれてくるメスライオンに、子どもたちは大興奮/photo:Ebuchi Takashi
[大阪・天王寺] 肉食獣と草食動物が同居? 後景は超高層ビル「あべのハルカス」/photo:Ebuchi Takashi

一方、生息環境を再現する生態展示もじわりと広がる。この春に全面開業した超高層ビル「あべのハルカス」の足元。大阪市の天王寺動物園は、都会の真ん中にアフリカの平原やアジアの熱帯雨林を丸ごと再現した展示が売りだ。「アフリカサバンナ」は、キリンやシマウマが草をはむのを背景に、手前のライオンも同じ空間にいるように見えるようつくられている。遠足の小学生が「シマウマ、大丈夫なの」と思わず声を上げる。


こうした展示には広い土地がいる。天王寺はかつて300種近くいた動物を約200種に減らして敷地を確保した。天王寺に約30年勤めた元飼育担当課長の榊原安昭(63)は「動物の繁殖を促すためにも、人への教育効果を高めるためにも、生息地の忠実な再現が大事だ」。


生態展示は、よこはま動物園ズーラシアの「チンパンジーの森」や、昨秋オープンで里山を再現した熊本市動植物園の「サル山」などに広がる。これらの計画に携わった大阪芸術大教授の若生謙二(60)は、世界の動物園を訪ね歩いた。計画を練る際は、動物の生息地に行って植生、地域との関係も調べる。「動物たちがもともと生きている環境だからこそ、本来の習性を引き出せる。日本ではまだ試行錯誤だが、世界は確実にその方向に向かっている」


(江渕崇)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)








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