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動物園、来てみる?

[Part4]「見せ物小屋」から「ノアの方舟」に






[スイス・チューリヒ]
巨大ドームが目玉のゾウの展示施設
/photo:Uchida Akira

野生動物は古代から、支配者が富と権力を誇示するために集められ、観賞されてきた。この影響もあり、動物園は、狭い檻(おり)に動物を押し込めるような「見せ物小屋」から、長い間、抜け出せなかった。大きく変わったのは、第2次世界大戦の後のことだ。


欧米ではペットや家畜、飼育されている野生動物が、本来の生態に合わせて「恵まれた状態」にあるよう扱う「動物福祉」の考え方が広まった。動物園は、動物保護団体などからの反対運動に直面した。動物を守るための法律も、欧米で相次いで成立。英国では1981年の動物園免許法で、動物園に動物や人にとって安全な環境を維持するよう求めた。この法律に関連し、動物ごとに食物の質や量、飼育の環境を定めた基準が作られ、これをクリアできない園には、閉鎖を命じられる仕組みも設けた。


資金力がある園は、1970年代から、展示の中に森林を再現したり、水路を作ったりと、環境一体型の「生態展示」に力を入れ始めた。動物の生き生きとした行動を引き出して、野生動物の本来の生態を見せる「行動展示」も、近年は盛んになっている。本編1part1にあるチューリヒ動物園のゾウ舎は、その両方を追求した最先端の展示といえる。


希少な野生動物を捕まえて動物園に展示することは、もはや許されなくなった。世界動物園水族館協会は93年、園の目的は、絶滅のおそれがある野生動物の保護や、生物多様性の保全にあると発表し、将来像を示した。来園者を増やし、これらの活動を支えるためにも、社会教育やレクリエーションにも一層、気を配るようになった。いま動物園にいるのは、大半が飼育の下で生まれた動物たちだ。本編1part3でみたように、動物園が持つ繁殖技術を用いて、絶滅にひんする種を飼育下で増やし、野生に戻す試みも行われている。さらに、米サンディエゴ動物園などは、将来の人工繁殖に備え、動物の精子や卵子を冷凍保存する「冷凍動物園」の整備も進める。現代版の「ノアの方舟(はこぶね)」ともいえる役割だ。


野生動物の保全や来園者の教育にも積極的に乗り出している。欧米をはじめ世界の園では、単なる動物の展示施設から、自然保護活動の拠点となる「自然保護センター」への衣替えを目指す動きが、ますます強まりそうだ。


(内田晃)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)






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