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動物園、来てみる?

[Part3]生息地守れ!アフリカ、アジアとつながる動物園






[ウガンダ・エンテベ] ゾウの孤児「チャールズ」が園内を散歩すると、子どもたちが集まってくる/photo:Ebuchi Takashi

ビクトリア湖のほとり、ほぼ赤道直下に東アフリカ唯一の大型動物園、ウガンダ野生生物教育センター(通称・エンテベ動物園)がある。密猟で親が殺されたり、密輸されそうになったりした動物を保護・展示している。


ここに、3歳のアフリカゾウ「チャールズ」がいる。2011年5月、湖で溺れかけていたところを、漁師に助けられた。生後10日ほど。衰弱していた。


その後、父親とみられるオスゾウの死体が、近くで見つかった。頭部に6発の弾丸を受け、牙をそぎ取られていた。







ゾウを育てた経験は、動物園にはない。飼育係のブルース・トゥメシジェ(28)は「どんなミルクをあげたらいいのかも分からず、全部手探りだった」。


助っ人として、横浜市のズーラシアの元飼育係でゾウを15年間世話した高橋文彦(39)が派遣された。ズーラシアなど横浜の3動物園は、08年に横浜であったアフリカ開発会議(TICAD)でエンテベ側と飼育などで協力関係を結んでいた。


高橋は昨春から1年間、国際協力機構(JICA)のボランティアとして働いた。チャールズの部屋に行くのは毎朝7時半。草を刈ってきて与え、水浴びをさせ、散歩に連れ出す。治療が必要になる場合に備え、人の言うことをきかせる訓練もする。


チャールズは最初、高橋に体当たりして威嚇してきたが、3カ月後ようやく、散歩のときについてくるようになった。約100キロだった体重は700キロになった。


エンテベ動物園で働くウガンダの飼育係ら14人が横浜で学び、横浜からも専門家17人を送り出した。





人工繁殖、動物園のノウハウ生かせ

[ウガンダ・エンテベ] 10年以上一緒にいるシロサイのペア。「関係がマンネリになってしまった」ようで繁殖行動がない/photo:Ebuchi Takashi


支援は動物の人工繁殖も見すえる。ウガンダでは、角の成分を漢方薬に使おうとサイの密猟が横行。1980年代に姿を消した。01年、ケニアからシロサイのペアがエンテベに来たが、繁殖はまだだ。


そこで、民間組織が営む「ジワ・サイ保護区」と組んで繁殖を目指す。エンテベから北に車で5時間。保護区では4月に生まれた赤ちゃんサイが母親について草をはんでいた。ケニアや米国から来た6頭と、その子どもたち9頭の計15頭が暮らす。密猟を防ぐためレンジャー計50人が24時間態勢で監視する。


エンテベ動物園は保護区からオスを借りたり、人工授精したりして繁殖させられないか検討中だ。飼育係のニコラス・モヒンド(34)は12年、横浜でサイの精液を採る方法を学び、毎朝練習する。


サイを国立公園に放す野生復帰が目標だ。それに備え、公園近くの住民を毎年100人招き、密猟の罪深さを伝えている。その教材作りも横浜から学んだ。園長のジェームス・ムシングジ(37)は「密猟という絶滅の原因を解決せずに放しても、また同じ結果になる」と話す。


旭山動物園は、マレーシア・ボルネオ島で森を追われた動物を助け始めた。昨秋、まずはゾウの保護施設を造った。


オランウータンの綱渡り展示は一躍有名になったが、生息地の森が開発で減っていることは知られていない。園長の坂東元(53)らは、園内など全国約200カ所に置いた飲料自動販売機の利益を、ボルネオ支援に回す仕組みをつくった。寄付も含め年約1000万円が集まる。


欧米の動物園も、アジアやアフリカに職員を常駐させ、研究活動や情報収集をしている。生息地との関係を深めれば、いずれ動物を送ってもらえる可能性も高まる。ウガンダからズーラシアに子ライオンを送ろうという計画もある。


旭山の坂東は言う。「動物園の本質的な価値は、野生動物の存在を守ること。生息地と積極的につながっていかないと、どこまでいっても単なる動物コレクションで終わってしまう」


(江渕崇)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)



ゾウのチャールズを訪ねて

ゾウのチャールズをウガンダ野生生物教育センターまで訪ねてみました(撮影:江渕崇、機材提供:BS朝日「いま世界は」)


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