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動物園、来てみる?

[Part2]ディズニーは教育+エンタメ



 



[アメリカ・フロリダ] 
アフリカのサバンナをリアルに再現。キリンが放し飼いに/photo:Toh Erika

緑茂る小道を歩いていると、頭上に乾いた銃声が響いた。見上げると息絶えたゾウやサイの顔、象牙の山がモニター画面に映し出されていた。「おぉ」。子どもたちが食い入るように見つめる。「アフリカでは密猟や人口増で、動物は危機にあります」。ナレーションが流れた。


米フロリダ州、ディズニー・アニマルキングダム。アフリカのサバンナを再現した、世界最大級のテーマパークだ。


約30人でトラックに乗り、木立を抜けると白黒のしま模様が見え隠れした。キリンの仲間、オカピだ。「おっと小さな橋が。つかまって!」。でこぼこ道を運転する女性ガイドがおどけて言い、子どもたちが歓声を上げる。水辺にはカバやワニ。ゾウやシロサイもトコトコと姿を現した。


この「キリマンジャロ・サファリ」だけで広さは約45万平方メートル。東京ドームの約10倍だ。


「誰もがアフリカに行けるわけではない。ここの『自然』をきっかけに、野生生物の保護のため積極的に行動するようになってもらえれば」。教育エリアマネジャーのナディーン・コサニエルは言う。




豊富な資金力でスタッフ引き抜き


ディズニーのブランド力を背景に入場料は大人100ドル強と、「動物園」としては高い。それでも入場者は年々増え、昨年は約1020万人。米国の主な動物園の数倍で、ウォルト・ディズニー社のテーマパーク・リゾート部門の好調を下支えしている。


テーマパークを数々繰り出してきたディズニーが、生きた動物を使ったエンターテイメントの世界に踏み出したのは1998年のことだ。開園当初は成功に懐疑的なメディアもあったが、懸念を払いのけるかのように、全米屈指の動物学者や獣医師、飼育係ら約320人を「豊富な資金力で全米から引き抜いた」(米動物園関係者)。


そうした飼育係らの姿は普段、表立っては見当たらない。展示エリアでの業務の大半は午前5時から開園の午前9時までに済ませる。本物のアフリカやアジアの自然の中にいるかのように演出、生息地の動物に思いをはせてもらうためだ。


園内の一角にはガラス張りの手術室があり、動物の手術を見られるようにもなっている。子どもたちに園内で動物や鳥、虫、その足跡などの模型を探させ、クイズに答えてもらうゲームも。「彼らは僕らの一番のお客さま。将来、獣医師や医師、教師になりたいと思ってくれれば、僕らは仕事を成し遂げたことになる」。獣医病理学者で動物管理のトップ、スコット・テレル(41)は言う。






米国の動物園は、市民の憩いの場として19世紀後半から発達。だがハリウッド映画やテーマパークの人気に押されて一部で閑古鳥が鳴き、各園は集客のため「楽しさ」先行に走る。一部は動物ショーも繰り出し、批判もされた。だがその過程で生まれた、動物を檻(おり)から放って迫力を演出する見せ方は今も脈々と受け継がれている。そうした動物園のライバルだったテーマパークの王者、ディズニーが環境教育を掲げて動物園界に参入、集客に成功した。


(藤えりか)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


変わる動物園

part1で紹介したスイスのチューリヒ動物園とディズニー・アニマルキングダムを取材したときの様子を動画にまとめてみました(撮影:内田晃、藤えりか、機材提供:BS朝日「いま世界は」)




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