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[Part1]ビールとのつきあい方











大手スーパー・イオンのビール類を扱う棚で、いま飛ぶように売れているのは、「バーリアル」。イオンが自社で開発した商品で、350ミリリットル入りで一缶88円と、大手メーカーのビールの半額以下だ。4年前に発売し、年間1億本以上売れているという。商品名は大麦(Barley)と本物(Real)にちなむ。


この商品は法律(酒税法)上はビールではない。原料に使う麦芽の量が少なく、「新ジャンル」(第3のビール)に属する(右の表参照)。かかる酒税額がビールより少ないことも、値段の安さに貢献している。「お手頃価格で、本物のビールに近い味を求めるお客さんの声にマッチした」(イオンの広報担当者)という。


2013年に国内で飲まれたビール系飲料のうち、酒税法上のビールの割合は半分にとどまる。量で見れば1960年代の水準まで減った。ビールには小売価格のほぼ半分にあたる税金がかかる。ビール酒造組合によると、米、独、仏などと比べ15倍前後の税率という。メーカーは90年代半ば以降、高い税率を避けようと、ビールに分類されない「ビール系飲料」の開発と販売にしのぎを削ってきた。


デフレ経済が続くなかで、消費者にも、より財布にやさしい「新ジャンル」などを愛飲する傾向が広がった(下のグラフ)。成人病を心配する年齢層には、ビールより糖質やプリン体を減らした新ジャンルや発泡酒を選ぶ人も多い。


ただ、こうした傾向が今後も一方的に進むわけでもなさそうだ。


国内ビール系飲料でトップシェアの「スーパードライ」を擁するアサヒビール。社長の小路明善は、低価格志向に加え、「プチ贅沢」など消費者の価値観が多様化していると指摘する。ビール系3分野それぞれで強いブランドを育てることを目指しながら、「スーパードライにマーケティングの資源を集中する」という。キリンビールは今年、ビールの主力ブランドである「一番搾り」の広告費を2倍に増やし、これまで「発泡酒」のCMに出ていた人気アイドルグループ嵐を「ビール」の顔に格上げした。「市場が二極化するなか、ビールも去年あたりから盛り上がってきている。減る一方だとは考えていない」との判断だ。


若い世代に広がる新しい「ビールの楽しみ方」もある。2003年から続く「日本版オクトーバーフェスト」。独ミュンヘンで開かれるビールの祭典を模したイベントで、昨年は11会場に計57万人が来場した。会場のドイツビールは1杯(500ミリリットル)1300~1500円と安くないが、東京での来場者は半分以上が20代の若者だった。主催者は「音楽の屋外フェスと同じような機会として楽しんでいるようだ」という。










photo:Suzuki Akiko


選手がシュートを決めると、ドーンと花火が上がり、スタジアムが熱狂に包まれた。米コロラド州デンバーのプロサッカーチーム、コロラド・ラピッズの試合。観客が手に持つのは、ほとんどがコップや缶入りのビールだ。


ラピッズファンの女性は「仕事の後にこうして飲むとほっとするでしょう。観戦中に飲むのは文化よね」。別の男性は「ワインは家で飲んできた。ビールはリフレッシュできるんだよ」。


ある屋台の女性は「一日に100杯売れる」という。記者(鈴木)も観戦しながら、7.35ドル(約750円)のビールを2杯飲んだ。酔い過ぎず、適度に興奮状態をサポートしてくれるのがビールのよさかもしれない。


デンバーのメジャーリーグの野球チーム、ロッキーズの本拠地は、コロラド州に本社を置く大手ビール会社が命名権を持つ「クアーズ・フィールド」だ。球場内に醸造所があり、日本でも売られている「Blue Moon」が飲める。


最近は観戦だけでなく、実際にスポーツをする人たちへのアプローチも始まっている。ドイツのエッティンガー社は、ノンアルコールビールを、スポーツドリンク代わりに勧める。原料のモルトやホップ、酵母に由来するプロテインやビタミンBを豊富に含み、運動で失われた水分や栄養分の補充に役立つというのだ。


カナダのヴァンプト社は「リカバリーエール LEAN MACHINE」と名付けたビール系飲料を発売すると発表した。アルコール度数は3.2%とやや低めで低カロリー。プロテインのほか、筋肉の回復に役立つLグルタミンなどを含む。栄養補給ができ「罪悪感を覚えずにのどの渇きをいやせる」とうたう。




photo:Inagaki Kousuke


2年前に五輪が開かれたロンドン。その後も続く開発ラッシュのはざまで減っているのが、英国の文化ともいえるパブだ。


つまみも食べずに店の内外でビールを立ち飲みし、雑談に興じる光景は、いまも変わらない。しかし、英国全体で1982年には6万7800軒あったパブは、2012年には4万9433軒と3割近くも減ってしまった。


「キャンペーン・フォー・リアルエール(CAMRA)」の調査によると、英国の成人でパブに一度も行ったことがない人が38%に上り、週1度以上パブに通う人の割合も5年前の24%から15%に減ったという。コリン・バレンタイン会長は「英国では毎週、28軒のパブが廃業している」と憂う。


日本やドイツ同様、若い世代のアルコール離れが進んでいるのが一因とされる。地価の跳ね上がったロンドンなど都市部ではパブを営業するより、建物を賃貸した方が利幅が大きいと家主が判断し、廃業になるケースも目立つという。


だが、パブ文化の復権を感じさせる動きもある。


ロンドン五輪のメーンスタジアムが目と鼻の先に見える運河沿いの印刷工場跡に2年前にオープンした「クレイト・ブルワリー」。今春の週末に訪ねると、若者らを中心に賑わっていた。自慢は、店の敷地内の醸造所でつくられるクラフトビール。様々な種類があり、1パイント(568ミリリットル)で4ポンド(約700円)前後で飲める。


英国では02年以降、小規模なビール醸造所の税金が軽くなり、起業が増えた。7年ほど前、ロンドンに二つだけだった醸造所は今、50を超す。香り豊かなエールビールの独自ブランドも続々と誕生。ラガー系と違い、冷やしすぎずに飲む英国の伝統の復権だ。


英国が発祥のサッカーとのかかわりも深い。かつて労働者階級の娯楽だったサッカーは、今や人気沸騰でチケットが高騰。スタジアムに通うこともままならず、パブで一杯飲みながら、店の大画面テレビで友人らとゴールに熱狂する人たちが増えてきた。開催中のブラジル・ワールドカップでも、イングランド代表の初戦の試合開始が英国時間の午後11時だったため、政府は特例として午前1時までの営業を許可した。


CAMRAロンドン支部のクリスティン・クラインは「パブ離れは確かにある。でも、パブはパブリックハウスの略であるように公共の場。同僚、仲間、地元の友人と触れあい、リラックスする社交場です。常温でもおいしく飲めるエールビールは、語り合いながら、じっくり楽しめる。よき伝統を守りたい」と話す。



(鈴木暁子、稲垣康介)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


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