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大学ってなんだ?

[Part2]留学生の「中継」で成長目指す





マレーシア国際イスラム大学。水色の屋根が映える/photo:Yamashita Tomoko


マレーシアで大学キャンパスを歩くと、アフリカからの留学生に必ず出会う。ソマリア人のハムザ・アイザック(25)も、そんなアフリカ出身の一人。国際イスラム大学でITを学ぶ。この国に来て6年。「とても快適。物価もそんなに高くないし、研究レベルも低くないしね」


ハムザは、ソマリアの首都モガディシオの出身だ。イスラム教が盛んな母国は、1980年代後半から続く内戦で荒廃する。マレーシア留学は両親の勧めだった。イスラム教の国であること、物価の安さ、英国の元植民地で英語が広く使われていることが大きかった。彼の友人で、ギニアから来たバラ(29)もうなずく。「欧州で学びたかったけど、物価が高くて諦めた。マレーシアでチャンスをつかみたい」。マレーシア政府によると、2010年の留学生出身国は、上位20位までの国のうち5カ国をアフリカ諸国が占める。


留学生の中には、学位を得て英語圏への再留学を目指す動きがある。「ここから豪州の大学に行きたいと思っているんだ」とハムザも言う。マレーシアの高等教育に詳しい上智大学教授の杉村美紀(51)は、マレーシアの立場を「留学生のトランジット・ポイント(中継地)」と表現する。ただ、中継地であってもお金は落ちる。実際に来て「マレーシアがいい」という学生も増えている。



「教育はサービス産業」

マレーシアの大学院で学ぶタオフィガット(中央)。キャンパスを歩けば、次々と同郷の友人たちと出会う/photo:Yamashita Tomoko


マレーシアは長年、留学生の送り出し国だったが、二つの転機が事情を変えた。一つが、1990年代後半のアジア通貨危機だ。留学を途中で切り上げたり、留学を断念したりした学生が国内にあふれ、政府は国内の高等教育の拡充に乗り出した。


もう一つが、2001年9月11日に起きた米同時多発テロ。欧米諸国でビザ取得が厳しくなった。そこでイスラム圏の学生が目を向けたのが、マレーシアだった。教育省で高等教育政策を統括するモルシジ・シラット(58)は「中東やアフリカからの留学生獲得は、当初から意図していたわけではなかった」と振り返る。


ナイジェリア人のタオフィガット(23)は2012年9月から、空港に近い大学院でITを学ぶ。キャンパスから歩いて10分の一軒家で、同郷の12人と生活する。夢は、帰国して学者になること。「ここは文化も気候も似ている。だけど停電はないし、研究に専念できる」とマレーシア生活を楽しむ。


マレーシア政府は、中東やアフリカから留学生を受け入れながら、それぞれの地域と連携を強めたい考えだ。マレーシア貿易開発公社は「教育はサービス産業」と位置づけ、積極的に売り込む。高等教育を出発点に、教育省のシラットは将来をこう描く。「マレーシアを拠点に、中東からアフリカ、アジアにネットワークが生まれる。国際的地位が高まり、マレーシア企業の進出も期待できる」


教育を産業の目玉にしているのは、マレーシアだけではない。地元のINTI国際大学教授アイリーン・タン(52)は「教育は世界を相手にする産業であり、競争だ」と言い切る。「競争で質も高まる。産業として捉えることは教育にとって決して悪いことではないはずだ」






(山下知子)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)

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