RSS

大学ってなんだ?

[Part1]アジアで注目される日本のものづくり教育



ジャカルタ東部の川沿いにたつダルマ・プルサダ大。2300人の学生が学ぶ/photo Yamashita Tomoko


インドネシアの首都ジャカルタにあるダルマ・プルサダ大学は、日本への留学経験があるインドネシア人らが設立した中堅私大だ。この大学で昨年11月、アジア高度専門職人材育成ネットワーク(APEN)への加盟を記念する式典があった。あいさつに立ったオロアン学長(72)は、よどみない日本語で語った。「私たちの大学をインドネシアにおける、ものづくりセンターにする」



APENとは、日本の高等専門学校(高専)の教育などをベースにした新しい人材育成システムを広めようと、3年前にできたネットワーク組織だ。加盟大学は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国、韓国、日本の計13カ国14校。事務局は都立産業技術高専と同じキャンパスの産業技術大学院大学にある。


高専は、技術系の専門教育を実践的に行う高等教育機関で、産業界の要請で1962年に創設された。中学卒業生を対象に、早い時期からの教育で技術センスを磨き、5年で社会に送り出す。現在、日本国内に57校。工科系大学に比べ、実習や実験を重視し、旋盤や溶接といったものづくりの基本から、高いレベルの理論まで深められるカリキュラムになっている。しかし、国内ではあまり知れ渡っていない。普通教育志向や少子化の影響もあり、平均倍率はここ10年ほど、2倍を切っている。


その高専がいま、製造業の発展とエンジニアの育成が急がれるアジアで注目されている。経済産業省の元官僚でAPEN事務局長の前田充浩(51)は言う。「日本の経済成長を支えてきたのが厚い中堅技術者層であり、高専だ。成長中のアジアが求める人材もそこにある」



産業界支える中間層を育てる

APENへの加盟式典に臨んだオロアン学長(右)と前田充浩/photo:Yamashita Tomoko

ダルマ・プルサダ大は来年、高専教育を土台にコースをつくる予定だ。成長が期待される自動車産業を視野に、電気工学や機械工学の分野を考えている。APENのメンバーでインドネシアの名門、バンドン工科大学からは教員派遣で協力を得られる見通しだ。土木・環境工学部副学部長のアデ(53)は「国の発展には、産業界を支える中間層が欠かせないが、インドネシアには、そうした人材を育てる力、場がまだない。ニーズは大きい」。


ダルマ・プルサダ大にとっては、生き残り戦略でもある。インドネシアでは現在、3000超の大学がある。有力私大にも日本語学科があり、日本語だけでは目立てない。昨年5月に日本から赴任した講師の宇田直史(39)は言う。「日本風のものづくりは、インドネシアでも関心が高い。大学にとって、最大のチャンスだ」


鉱物資源の輸出で経済成長が著しいモンゴルも、高専教育に熱い視線を注ぐ。国際通貨基金(IMF)によると、GDPの実質成長率は2011年に世界1位、12年は3位。教育・科学大臣のガントゥムル(40)は「専門家、エンジニアをどんどん養成しないといけない。日本の高専を導入するのが、方法として間違いがない」と力説する。


そのモンゴルでは昨年10月、モンゴル工業技術大学に高専教育の手法を採り入れた「モデル教室」ができた。学生数33人。北海道の国立苫小牧高専がプログラムを提供し、都立高専の名誉教授2人が現地で指導にあたる。


APEN事務局長の前田は言う。「日本が世界をリードできる教育が産業人材の育成だ」。ASEANが2015年に経済統合して世界有数の市場になるなどアジアは成長し続ける。「その市場の人材を日本が支える。それは日本の国益につながる」と確信している。


(山下知子、金成隆一)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


…続きを読む

この記事の続きをお読みいただくためには、購読手続きが必要です。
GLOBE総合ガイド
  • ログインする
  • ご購読申し込み

朝日新聞デジタル購読者(フルプラン)の方なら手続き不要

「朝日新聞デジタル(フルプラン)」を購読済みの方は、ご利用のログインID・パスワードでGLOBEデジタル版の全てのコンテンツをお楽しみいただけます。「ログイン」へお進みください。
朝日新聞デジタルのお申し込みはこちら

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示