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大学ってなんだ?

[Part3]教えることは学ぶこと。少子化で迫られる教育改革






近畿大学総合社会学部の久隆浩の基礎ゼミの様子/photo:Goto Eri


大阪府東大阪市の近畿大学は13学部に3万人が学ぶマンモス校だ。だが、4年前に開設した総合社会学部は1年生から教員の研究室で行う基礎ゼミが必修になっている。昨年12月、環境系教授の久隆浩(55)の基礎ゼミを訪ねた。1年生11人がテーブルを囲む。壁に映し出されたスライドに、久がテンポよく解説を加える。


「愛媛県双海町です。地域振興に悩んでいたが、実は素晴らしい資源があった。それは何か。地図がヒントです」。数人の学生が「海かな」とつぶやく。「海なら大阪にもあるね。答えは夕日。なぜ町の人は気づかなかったんだろう」と久が言うと、一人が「当たり前だから」と答えた。


基礎ゼミは1年生450人を10人程度のクラスに分け、計10人の教員が数週間ずつ教える。カリキュラムを設計した久は「教員と学生の距離が近くなり、顔の見える指導ができる」。ゼミに出ていた学生も「ほかの学生の意見が刺激になる」と満足げだ。志願倍率は6.6倍と、いまや文系一の人気学部だ。



学生が学生から学ぶ

甲南大学マネジメント創造学部は、学生が空き教室を自由に使える。ここは日本語禁止の英語ゾーンだ/photo:Goto Eri


日本の大学の風景が変わり始めて久しい。学部や学科の改変・新設が相次ぎ、少人数のゼミや課題解決型授業を採り入れる大学が増えた。


背景にあるのは少子化に伴う大学間競争の激化だ。大学進学率は5割を超えるが、2002年度に150万人いた18歳人口は11年度に120万人まで減り、私立大の4割超が定員割れだ。学生が選ばれるのではなく、選ぶ時代になり、大学は入ればおしまいではなく、入学後にどう成長できるかが強く求められるようになった。


「学生にどうやって学ぶことの価値や方法を教えるか。いま日本の大学が直面する課題はそこにある」。甲南大学が2009年に開設したマネジメント創造学部(兵庫県西宮市)の学部長の佐藤治正(61)は言う。1年次の授業はほとんどが必修で、20分以上遅れると欠席扱い、3分の1以上休むと落第だ。「人が人を育てるのが教育。まず徹底的に勉強するくせをつけさせる」


少人数教育の流れの中、いま、注目されているのが、学生が学生から学ぶという新しい仕組みだ。06年開設の立教大学経営学部では「リーダーシップ教育」を専門科目と並べカリキュラムの両輪とする。企業や官庁に企画提案するプロジェクト型授業でのグループワークでは、先輩学生が大きな役割を担う。後輩たちの授業の準備や進行を手伝い、時には教員顔負けの授業さばきをみせる。学生ならではの当事者目線で、授業の改善を提言する。担当教授の日向野幹也(59)は「人は人に教えることで驚くほど成長する」。毎年、募集に対して3倍の希望者がいるという。


大阪府八尾市の大阪経済法科大学では「メンター」と呼ばれる学生の存在が教育の質の向上に一役買う。2年生以上の学生から希望者を募り、1年生の面倒をみる。9年前に制度を始めたきっかけは中退率の高さだった。数字は非公表だが「ひどい状況だった」(岩村等副学長)。大手予備校による偏差値は40台。意欲を持てない学生たちが大学に適応できるよう、教員と職員、学生が「三位一体」で取り組んだ。


1年から1クラス20人未満の演習を必ず受けさせ、進路希望が似ている学生を同じ演習に集めて友人をつくりやすくした。休みがちな学生にはメンターと大学職員がこまめに連絡する。「どうすれば早起きできるか」といった相談にものり、学生が授業についていけないときは職員が補習を提案する。その結果、中退率は最悪だった頃から大幅に減少。公務員試験の合格者数も着実に増えてきた。

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