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コメ

[Part1]経済成長が食生活を変えた/ガーナ



首都アクラ近郊の大規模水田。大型コンバインを使うなど機械化が急速に進んでいる/photo:Miyazaki Yusaku

ジャズ、アンクルサム、ロイヤルアンブレラ、プライド……。たばこやウイスキーの名前ではない。ガーナの首都アクラの市場で見かけたコメの銘柄だ。主要な市場を三つ回っただけで50以上あった。赤、青、緑と派手な色の袋には自由の女神や仏像などが描かれている。


ほとんどは輸入のインディカ米。タイ、ベトナム、米国産が中心だが、パキスタンやインド、南アフリカ、ナイジェリアなども加わる。多くは「香り米」だ。炊くとポップコーンのような匂いがする。国産米にはなかったが、1990年代に東南アジアから輸入されて人気になった。スパイスのきいたガーナの料理に合うからだ。高いものは5キロで30セディ(約1300円)。国産米の倍ほどする。


「輸入米は金持ちの会社員や公務員がまとめて買っていく。売り上げは伸びているけど、同業者が増えて大変」。コメを売っていた女性はそう話した。


クリスティー・トルグボル/photo:Miyazaki Yusaku



夕食に週3回はコメを食べるというクリスティー・トルグボル(46)の自宅を訪ねた。アクラ市内の金の採掘会社で社長秘書として働きながら、女手ひとつで一人娘のプレシャス(11)を育てている。


鍋にコメと水を入れ、炭火で20分ゆでると炊きあがり。その間に隣の鍋では、唐辛子をきかせたサバのトマト煮込みができあがった。皿に盛ったご飯に煮込みをかけてスプーンで食べる。「コメの香りと唐辛子の辛さが食欲を誘う。私も娘もコメが一番好き」とトルグボルはお焦げをほおばった。


お気に入りは5キロ20セディ(約900円)の米国産香り米だ。月収は400セディで平均的なガーナ人の2倍近い。それでも2袋買うと10分の1がコメに消える。「高いけれどコメ無しの生活はもう考えられない。おいしいし、調理に時間がかからない。働く母親には本当に助かる」



あこがれの食べ物が主食に

ガーナ第2の都市クシマ郊外の農村でコメをつくるビランテ・コンデさん一家。「コメの売り上げで新しい家や山を買った。子どもたちも全員学校に行けるようになった」と語る/photo:Miyazaki Yusaku

ガーナでは粉にひいたトウモロコシを練り、発酵させてゆでた「バンクー」や、イモの一種のキャッサバとバナナを蒸してきねでついた「フフ」が伝統的な主食だ。日持ちせず、作りたてを食べるので店では売っていない。1時間以上かかる作業は女性の役割とされてきた。


金や石油のとれるガーナは1980年代半ばに経済成長が始まり、人口も急増。2011年の成長率は14%を超える。2012年のコメの消費量は90万トン。この30年で10倍以上も増えた。アフリカの中でも際だった伸び方だ。


もともとガーナなど西アフリカ一帯には地元でとれるコメを食べる文化があった。「外国から入ってきたパンとは歴史が違う。ただ、値段がとても高く、特別な日だけのあこがれの食べ物だった」というのはガーナ食糧農業省情報資源センター長のイモロ・アモロ(50)だ。「経済成長で収入が増えると、みなコメに向かった。都会ではすっかり主食に躍り出た。それが農村にも広がりつつある」


農村の様子を確かめようと、アクラから車で4時間半のオフォアセ村に向かった。カカオやバナナの木の間に点在する農家が見える。部族長の血をひく有力者の女性ナナ・アドア・ニャルコア2世(58)が、トマトのシチューをかけたコメ料理を振る舞ってくれた。「昔は結婚式やクリスマスにだけ食べられた。それが楽しみだった。今では毎日のように食べている」。村の学校では、数年前から週5回の給食もコメになったという。


食糧農業省幹部のイモロ・アモロ。「国産米の品質はこの10年でかなりよくなった。輸入米に負けていない」と語る/photo:Miyazaki yusaku

コメの消費の増え方に、国内の生産力は追いついていない。自給率は3割程度。国全体で輸入に年間2億ドルの外貨を払っている。それでも、外国の技術支援や資金援助などで、品質や生産量は少しずつ上向いてきた。90年代から東部の国境近くなどで人気の香り米が栽培されるようになった。タイのジャスミン米を品種改良したコメも導入された。


自らも国産米の販売会社を経営する食糧農業省のアモロは言う。「アフリカは外国の資本で外国向けの食糧を作らされてきた。コメは違う。自分たちが食べるものを自分たちで作る。そこにはガーナだけではなく、アフリカの希望が詰まっている」


(宮崎勇作)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


ガーナでコメを食べる

トウモロコシやイモ、バナナをもとにつくった伝統食が主食だった西アフリカのガーナ。だがいまではコメが主食に躍り出た(撮影:宮崎勇作、機材提供:BS朝日「いま世界は」)


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