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時をはかる

[Part2]職人の手づくりで1000万円





独立時計師フィリップ・デュフォーの工房/photo:Wake Shinya

スイスには独立時計師がいる。企業に属さず、自分の技術をブランドに機械式時計をつくる職人たちだ。


チューリヒにある認定機関「独立時計師アカデミー」の正会員は34人。カリ・ヴティライネン(51)は、その一人だ。モティエという小さな町に3階建ての工房をもつ。スタッフは15人。うち1人は日本人だ。


スタッフが3台の工作機械を動かしている部屋に案内された。町工場のような雰囲気だ。「後の方の工程の磨きや装飾は手作業だけど、金属から基板や部品を切り出すのは工作機械を使うんだ」。ヴティライネンは、そう話す。


ヴティライネンが製作した腕時計/photo:Wake Shinya

棚には金や銀、銅や亜鉛の合金などが並ぶ。「部品を外部の業者から調達する職人もいるが、僕はなるべく部品づくりからやる」


パソコンで設計図をつくり、ハイテク機器で部品をチェックする。その一方で100年前と同じ道具も使い、歯車や針を0.01mmの精度で仕上げていく。針1本に1日かけるときも。「持ち主が見えない所も磨きをかける。そうやって時計に命を吹き込む仕事だよ」


今年、部品228点を組み込んだ時計を発表した。宝石や貴金属をちりばめているわけではないが、値段は1000万円近くする。限定25個の予約は埋まった。世界中に限られた数だけという希少性や、有名時計師の作品というブランド性、きわめて複雑で独創的な機械メカニズムが時計の価値を高める。





お金に換えられない価値


アカデミー正会員のフィリップ・デュフォー(65)は、時計づくりが盛んなル・サンティエに工房を構える。かつては5人ほど弟子がいたが、「最近の若者は向上心が足りないから、みんな追い出した」という。


スイスや米国の時計メーカーで技術を身につけた。その後、百数十年前の懐中時計の修理を請け負ううち、「計算機も無い時代にこれを手づくりした人がいた。自分も挑戦すべきだ」と感じたという。


手がける時計は1個500万円前後。顧客は医師や弁護士が多い。一番の得意先は日本。2000年に日本向けの作品を発表すると、限定100個の予約がすぐにいっぱいになり、追加で100個を受注した。最後の一つをつくり終えたのは去年。発表から12年かかった。


材料費や宣伝費などの経費は自分で負担する。だが、企業の歯車になるより、設計から製作、宣伝、販売を自分でこなすスタイルが気に入っている。「人とつながれる。お金に換えられない価値を得られる仕事さ」




(和気真也)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


独立時計師の世界

企業に属さず個人ブランドで機械式時計をつくるスイスの独立時計師の工房を訪ねた(撮影:和気真也、機材提供:BS朝日「いま世界は」)

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