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時をはかる

[Part4]人間が得たもの、失ったもの






初期の機械式時計/photo:Wake Shinya

最古の時計の記録は、紀元前4000~3000年ごろにさかのぼる。古代エジプトで考案された日時計が第一歩とされている。紀元前2000年ごろには水時計が登場する。エジプトやギリシャ、中国など幅広い地域で使われていた。


これらの時計は天文や占星術と関わりが深く、「神の領域」として権力者が管理する傾向にあった。


ヨーロッパの教会に時計台と機械式時計が現れるのは、ずっと後の13世紀ごろだ。スイスの時計博物館によると、「僧侶たちが神に祈りを捧げる時刻を知るためのものだった」という。このころは時計は宗教との関係が深かったことがわかる。


近世になると、科学との結びつきが強まっていく。


最初は重りの力で歯車を回す仕組みだったのが、やがて、ゼンマイが考案される。ゼンマイは時計を小型化し、16世紀になって懐中時計が誕生すると個人で時間を管理することが可能になった。


18世紀になると、時計は急速に精度を上げる。遠洋航海で海難事故を減らすためだった。


精度のいい時計は、18世紀半ばの産業革命にも影響する。労働時間を計る道具として欠かせなくなったのだ。時計は時間とお金を結びつけ、生産性や効率化という概念を社会にもたらした。



時間が見えるということ



携帯日時計/photo:Wake Shinya

その後も時計は、小型化と精度アップの両方向で進化していく。


最初の腕時計は、女性の腕輪に装飾品の一つとして時計を組み込んだものだった。男性については、第1次世界大戦の後、軍人の間で腕時計が流行して定着していく。科学技術の発達とともに、クオーツ時計や原子時計という超高精度のものが発明された。


かつて「神の領域」にあった時計は、いまや身近にあふれている。ファッションアイテムになり、携帯電話やパソコンに標準装備されるようになった。時間を計る技術の進歩は生活を変え、産業や科学、趣味の世界も発展させてきたことになる。


一方で、見えない時間を見えるようにしたことで、人間は「忙しさ」にとらわれるようになった。


ドイツの作家ミヒャエル・エンデは1973年に発表した物語『モモ』で、「灰色の男」たちが人々の「時間」を盗み、生活の余裕を失わせる世界を描いた。エンデ自身は拝金主義への警告で書いたというが、「時間に追われて心の豊かさを失った現代への警告」と受け止めた人も多かったのではないだろうか。


人は時計を手にいれたことで、何を得て何を失ったのか。時計をめぐる旅に出た。


(和気真也)

(文中敬称略)

本編2へ続く)

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