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[Part5]人はなぜ踊るのか/神庭亮介(文化くらし報道部)






歌川豊国・源氏十二ケ月之内/1856年

日本ではここ数年、風俗営業法違反でのクラブ摘発が相次いでいる。取り締まりに反発する声は日に日に広がり、法改正を求める署名は15万筆を超えた。署名活動が大きなうねりとなったのは、ダンスが人間にとって欠かせない、根源的な営みだからなのか。多くの人を引き付けるダンスの魅力を知りたくなったのが、今回の特集に取り組むきっかけだった。人はなぜ、踊るのだろうか。


ダンスの起源は、神への祈りだったとされる。立命館大教授の遠藤保子(舞踊学)は「古来、人は踊りを通して五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を祈願してきた」と語る。


ダンスは、コミュニケーションを深める手段でもあった。江戸時代、盆踊りは若者たちの性の解放の場として、重要な役割を果たしていた。そこで出会った男女が関係を持ち、結婚に至るケースも多かったという。『盆踊り 乱交の民俗学』の著者、下川耿史(70)は「踊っている最中のトランス状態は、性的興奮に近い。性は踊りの本質だ」と話す。


祭りや結婚式、誕生日、葬儀など人々はことあるごとに集まり、踊ってきた。だが、近代合理主義の広がりとともに、ダンスから宗教色や性的な色合いは薄れていく。社会の専門分化が進んで、踊り手はプロに限定され、見るだけの人が増えていった。『檻のなかのダンス』の著者、鶴見済(49)は「生産性を重視する近代国家は、学校や工場、軍隊を通じて人々を訓練し、合理的で従順な身体を求めてきた」と解説する。


記者の3歳の娘は、教えてもいないのに、音楽に合わせてぴょんぴょん踊る。しかし、大人にとって踊ることへのハードルはそう低くない。人は成長し、社会に適応する過程でダンスを忘れていくのかもしれない。


ただ、そんな中でも、非日常の解放感を求め、ダンスに興じる人たちが存在するのも間違いない。過去数十年、散発的に繰り返されてきたダンスブームは、意味や成果ばかりを追い求める頭でっかちな社会への「からだの反乱」として読み解くこともできるのではないか。


最近では、「ハーレム・シェイク」と呼ばれるダンス動画が、ネット上で流行している。音楽に合わせて一人が踊り始めると、その動きに感染したかのように、周囲も一斉に踊り狂うのだ。無意味な馬鹿騒ぎと言ってしまえばそれまでだ。何かのために踊るのではなく、ただ踊る。合理主義のくびきからの解放こそが、現代におけるダンスの本質なのかもしれない。


(文中敬称略)


人はなぜ踊るのか

モスクワで急増中のバレエ教室、米国で盛んなダンスセラピーの現場を訪ね、人はなぜ踊るのか考えた(撮影:関根和弘、和気真也、機材提供:BS朝日「いま世界は」)


取材にあたった記者



神庭亮介(かんば・りょうすけ)

1983年生まれ。福島総局などを経て、文化くらし報道部で音楽を担当。たまにクラブに行く。

@kamba_ryosuke

関根和弘(せきね・かずひろ)

1975年生まれ。大阪社会部などを経て、モスクワ支局記者。「阿波踊り」を習ったが、挫折。

@usausa_sekine


宮崎勇作(みやざき・ゆうさく)

1974年生まれ。大阪社会部などを経て、GLOBE記者。セネガルの街中で

ダンスに挑戦した。

@yskmiyazaki


和気真也(わけ・しんや)

1979年生まれ。デジタル編集部などを経て、GLOBE記者。踊りは苦手、でもクラブで踊ってみたい。

@wakeshin



(今回の「編集長から」は「踊れない私ですが」です)

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