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お茶、再発見

[Part2]進化するペットボトル 緑茶は「にごり」戦争/日本



緑茶、ウーロン茶から紅茶、ブレンド茶まで。ペットボトル入りの茶飲料は、ほとんどの日本人が買ったことがあるだろう。メーカー各社が細かい技術開発競争にしのぎを削り、日本独自に発展した飲み方だ。風味も毎年のように開発され、不断に「再発見」しているといえるかもしれない。


ペットボトル飲料は「千三つの世界」(1000種売り出し三つしか残らない)といわれる厳しい業界だ。同じブランドでも中身やデザインを頻繁に変え、消費者を引きつける工夫をこらす。



茶葉を主原料とする緑茶、紅茶、ウーロン茶、さらに麦茶やブレンド茶を合わせたペットボトルと缶入りの茶飲料を買うのに使った金額は、2011年に日本の1世帯あたり5749円で、茶全体への支出の46%を占める(総務省調べ)。飲料総研によると、最も多く売れるペットボトルは緑茶で、500mリットル単位に換算して年に51億本。紅茶は28億本、ウーロン茶は17億本ほどだ。


緑茶のペットボトル飲料の販売開始は1990年と、歴史は浅い。前身である缶入りも85年で、缶コーヒーが69年には登場していたのと比べて遅い。多くの外食店で緑茶が無料で出され、お金を払って買うイメージが薄かったうえ、ペットボトルは缶より酸素を通しやすく、技術的に酸化防止が難しかったためだ。


そこで、酸化防止のためにビタミンCを添加。特に、ペットボトルは加熱すると酸素がさらに通りやすくなるため、伊藤園はホット用のペットボトルを、酸素を吸収する透明のナイロン素材をはさむ5層構造とした。


伊藤園が「お~いお茶」の500mリットルのペットボトル入りを96年に売り出すと、健康志向の高まりと相まって飛躍的に売り上げが伸びた。いまも長くトップを走り続けているが、ライバルが猛追している。


最近の商品開発のキーワードは「にごり」だ。従来、ペットボトルの緑茶は、品質を一定に保ち、見栄えもよくするため、透明に仕上げることが追求されてきた。そこで、緑茶市場で出遅れていた日本コカ・コーラは「ペットボトルのお茶になかったもの」として、「にごり」を前面に出すことを狙った。


家庭で急須を使って茶を入れる場合、抽出した成分の粒子が茶の中に漂い、トロッとした飲み口になる。描いたのはそんなイメージだ。しかし、にごりのもととなる抹茶成分は生産ラインの機械に目詰まりを起こすこともある。開発担当者は抹茶粒子の大きさを微調整するなど、技術的な課題をひとつずつ克服した。さらに、京都で約450年の歴史を誇る製茶会社「上林春松本店」と提携して07年に「綾鷹」を発売。広くファンを獲得した。


これに対抗して、伊藤園は昨年、「お~いお茶」シリーズから「にごりまろやか」と抹茶入り「冬の緑茶」を発売。サントリーも抹茶の量を3倍に増やした「伊右衛門」の新製品を発売した。工場には石臼を並べ、機械で自動的に抹茶をひいている。


紅茶は、キリンビバレッジの「午後の紅茶」が86年の発売以来ペットボトルでの首位を走る。2010年から3年連続で過去最高の販売量を更新。日本の紅茶茶葉の全輸入量2万tのうち2割ほどが、「午後の紅茶」向けだ。


首位を維持するために、年に数種類は新製品を出す。10年には、缶コーヒーを買う男性層にもファンを広げたいと、「エスプレッソティー」をあえて缶のみで発売。紙パック入りも含めると、現在22種類を販売している。


中国に進出



ウーロン茶はサントリーの独壇場だ。日本人になじみがなかった中国茶に着目し、81年にウーロン茶を売り出した。爆発的に伸びるきっかけは、接客をするホステスが似た色のウイスキーの代わりとして飲める、と人気が出たことだったという。


日本のペットボトルは、茶のふるさと中国にも進出している。英市場調査会社ミンテルによると、ペットボトルや缶入りのように、そのまま飲める茶は、日本では2011年に1人あたり40リットル以上飲まれたのに対し、中国は11.5リットルにとどまり、これからの市場だ。


上海でもお茶のペットボトル飲料は根強い人気だ/photo:Akiyama Noriko

上海で日系コンビニのファミリーマートを訪ねると、台湾や中国ブランドの緑茶と「お~いお茶」が並んでいた。副店長の朱雨晴(20)は「砂糖入りは前から地元商品がありますが、健康志向の人は無糖の『お~いお茶』を選びます」。


伊藤園は2010年、中国に進出。今年は約2500万本の現地生産を計画する。


中国進出の歴史が長いのは、サントリーのウーロン茶だ。97年に上海で販売を開始した。今は上海・北京などで年に7200万本を売り上げる。現地法人の会長兼社長の齋藤和弘(56)は、「上海市内のお茶飲料市場の1割、ウーロン茶に限れば9割超のシェアを持つようになった」と胸を張る。


(秋山訓子、青山直篤)

(文中敬称略)


取材にあたった記者


秋山訓子(あきやま・のりこ)

1968年生まれ。

政治部などを経てGLOBE記者。中国茶が好きで、おすすめは、グラスにいれた雲南紅茶にバラを浮かべたもの。


青山直篤(あおやま・なおあつ)

1981年生まれ。

山口総局を経てGLOBE記者。1日5、6杯は飲むコーヒー党だったが、今回の英国取材で茶に目覚めた。


五十嵐大介(いがらし・だいすけ)

1974年生まれ。

経済部、社会部などを経てGLOBE記者。コーヒー好きだが、時々フレーバーティーを飲むようになった。


リサーチ協力

寺山ひかり(てらやま・ひかり)

1991年生まれ。上智大新聞学科3年。



(今回の「編集長から」は「コーヒー党のお茶の旅」です)









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