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お茶、再発見

[Part1]伸びる消費、コーヒーを上回る




なぜ世界中の人びとが茶を飲むのか。水にはない味わいがあり、人を酔わせる酒とは反対に、頭をすっきりさせてくれる。だがそれだけなら、茶と同様、カフェインを含むコーヒーにも当てはまる。最大のライバル、コーヒーに比べると、茶の飲まれ方にはどんな特色があるのだろうか。


国際茶協会と国際コーヒー機関の統計で世界の生産量をみると、2011年までの10年間で茶葉は430万tまで毎年右肩上がりで4割増えたのに対し、コーヒーは788万tまで7%増えただけだった。茶とコーヒーの1杯あたりに使う量をそれぞれ2g、10gとして単純計算すると、世界中で毎日、茶59億杯、コーヒー22億杯分にあたる量が生産されていることになる。飲まれる量では、茶に軍配が上がる。


茶とコーヒーの価格を同じ物差しで比べることはできない。ただ、その両方を多く飲む米国の場合、国際茶協会と米政府のデータから、11年、同じ1tあたりの茶葉の輸入額が約3360ドル、コーヒーの輸入額は5413ドル。単純比較はできないが、コーヒーは1杯あたりに必要な重さが茶葉の数倍程度あることを考えれば、茶はかなり割安だといえそうだ。



茶の輸入量はロシアがトップ



コーヒーはおおむね、先進国の飲み物だ。米国、欧州連合(EU)、日本だけで世界のコーヒー輸入量のほとんどを占める。一方、茶の輸入量はロシアがトップ。さらに、パキスタン、エジプト、イラン、モロッコ、アラブ首長国連邦、アフガニスタンといったイスラム圏の国々が輸入量で上位にあることも特徴的だ。


英国の旧植民地、インドやスリランカ、ケニアで大規模栽培が進み、茶を安く供給できるようになったことで、コーヒーの本場だった中東に茶が浸透した。



日本でも、茶は決して負けていない。コーヒーの消費量は80~90年代にかけて2倍以上に増えたものの、2000年代に入ってからは伸び悩んでいる。一方、日本茶業中央会の統計をみると、茶の消費量は80年代から緩やかに伸びた後、近年は微減傾向のため、約30年前とあまり変わっていない。



総務省の家計調査によると、茶との比較でコーヒー消費に最も勢いがあったのは90年代前半だ。90年、1世帯あたりの年間支出額は「コーヒー+ココア」で7235円と、「緑茶+紅茶」の7169円を初めてわずかに上回った。だが、翌年にはすぐ逆転。ペットボトル入りの茶が普及し始めた90年代後半から現在まで、支出額は茶の優位が続いている。


コーヒーチェーンのスターバックスは1996年の国内初出店以来、2012年3月現在で955店へと店舗数を増やした。こうした急成長は目につきやすいが、実は「日本全体では、自宅でコーヒーを飲む傾向が圧倒的に強まっている」(全日本コーヒー協会専務理事の西野豊秀)。


総務省の統計によると、1981年には約15万5000の喫茶店があったが、2009年には約7万7000とほぼ半減した。スタバなどのコーヒーチェーンが増やしたのはせいぜい5000店ほど。西野は、携帯電話が普及して喫茶店での待ち合わせがすたれたことや、家庭でおいしいコーヒーが飲めるようになったことが喫茶店離れに影響したとみる。


家庭にコーヒーが広く浸透し、急須で飲む緑茶の消費は低迷したが、ペットボトルの茶の伸びがそれを埋め合わせた。11年の統計では、ブレンド茶なども入れた「茶類」への年間支出額は1世帯あたり1万2487円。「コーヒー+ココア」の9320円を3割ほど上回る。


ロンドンに本部を置く国際茶協会の責任者で、スリランカ出身のマヌージャ・ピエリス(53)は言う。「ニューヨークやロンドンのような都会でコーヒーを楽しむ人たちは、世界全体からみれば少数派。お茶は貧富を問わず、誰にとっても身近な点が強みだ」


(青山直篤)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)





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