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お茶、再発見

[Part2]高級紅茶、6年で値段7倍/中国







安徽省の山並みに広がる茶畑/photo:Akiyama Noriko

「金駿眉(ジンジュンメイ)がありますよ、安くしますよ」


茶の卸売店が集まる北京市内の通り、馬連道。その一角にある大型ビル「茶城」に入ると、次々に販売員が声をかけてきた。3フロアに約300の茶の卸売店が軒を連ねている。


金駿眉は、世界遺産でもある景勝地の福建省・武夷山(ぶいさん)で採れる人気の紅茶だ。卸売店の一つ「正岩大紅袍」で飲んでみた。褐色と金色が混ざった茶葉は見た目も美しい。いれると、蜂蜜のような濃い香りがして、飲んだ後も味わいが深く残る。



金駿眉の茶葉を手にする「正岩大紅袍」の常彩云オーナー/photo:Akiyama Noriko

オーナーの常彩云(35)によれば、2006年に売り始めたときは500g(約100杯分)あたり800~1000元(1万~1万3500円)ほど。それが、取材で訪れた昨年末は6000元(8万1000円)に値上がりしていた。「高くなってもよく売れる。共産党幹部らへの贈り物として人気がある。小売店だと2、3倍して、偽物も多い」。実際、市中心部の有名チェーン店では200gで4500元以上した。


中国は茶の生産量、消費量とも世界一。特に消費量は、11年までの10年間で2.6倍に増えた。消費の半分以上は緑茶で、ウーロン茶、紅茶と続く。中国には1000を超す茶の種類があるといわれる。


中国茶葉流通協会の副会長、王慶(48)によると、中国で茶を飲む人口は約30年前の1億人から現在4億人ほどに増えた。とはいえ、全人口13億のまだ3人に1人にも満たず、市場拡大の余地が大きい。


もともと茶は生産地近くで飲まれる大衆用のものか、一部の金持ちが高級品として愛好するものだった。庶民が主に飲んでいたのは、沸騰させた湯を冷ました白湯(さゆ)だ。それが経済成長と流通網の発達にのって茶文化が浸透。一部の高級銘柄は価格が高騰し、バブルともいえる状態が続いている。








発祥の地、魅力再認識



茶の種類や飲み方を教えるスクールも人気だ。中国政府が2002年、茶をおいしくいれる「茶芸師」と茶葉の種類を評定する「評茶師」の国家資格を設けたこともきっかけだ。

東方国芸の熊志惠校長/photo:Akiyama Noriko

北京市内のスクールの一つ「東方国芸」は、茶館を経営していた校長の熊志惠(53)が02年に開校した。市内3カ所で年に1000人以上が学ぶ。


12日間集中して学ぶ茶芸師3・4級取得コースに来ていた杜愛紅(20)は、茶館で働くかたわらここに通う。資格を取れば、給料が上がるからと、一カ月分の給料3000元(約4万円)に迫る2800元の授業料を自腹で申し込んだ。「将来は自分で茶館を開きたい」という。


校長の熊は富裕層向けプライベートサロンからもよく講師に呼ばれるという。「生活水準が上がり、質のいいお茶を飲みたいという人が増えてきたのだろう」


市場拡大を反映し、茶メーカーも急成長している。


その一つが「謝裕大」。「謝」は会長の謝一平(50)の一族の名字だ。社名をブランドとして前面に出して成長。国営企業の力が強かった茶の業界で、初の株式国内上場を目指している。

謝裕大の謝一平会長/photo:Akiyama Noriko

本社のある安徽(あんき)省の黄山(こうざん)は、上海から西へ飛行機で1時間強。茶畑は、ゆったりとした川に沿った山並みに広がり、時に霧が立ちこめる。ふもとには白い壁の家が並ぶ。


銘茶である緑茶「黄山毛峰(こうざんもうほう)」などを生産。国内に4工場、200の販売店を抱える。12年の売上高は約3億5000万元(47億円)と過去最高となった模様だという。


会長の謝によれば、黄山毛峰は19世紀後半、5代さかのぼる初代の経営者が開発した。人気をよび、上海にも販売拠点を置いて輸出もした。だが、上海事変が起き、1938年にいったん営業を停止。60年後の98年、親族4人で営業再開した。


創業者の似顔絵をトレードマークにして、「百年」をキャッチフレーズに伝統を強調。茶の製法で六つの特許を取ったという販売店の内外装は黒と赤を基調として統一し、技術力と高級感を打ち出した。08年には黄山市内に博物館を開館。製法や、初代の使っていた農具や生活用品などを紹介している。


謝は自分たちが成功した理由を「中国では、お茶産業は加工技術も、マーケティングも発展していなかったのでチャンスがあった。洋服や家電に比べて、お茶はブランドの意識が薄く、そこに目をつけた」と語る。


(秋山訓子)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)


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