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シェフと科学者が並ぶ教壇

[Part3]

救援隊受け入れ、阪神大震災の教訓

 

海外からの支援の受け入れをどうするか──。

3月11日夕方。外務省の大臣室に、幹部30人近くが集まった。余震に揺られるなか、幹部たちの頭をよぎったのは、海外からの支援を十分に生かせなかった阪神大震災の教訓だ。


「阪神」では発生直後から、各国政府による支援の申し入れが相次いだが、日本側の態勢は整っていなかった。

そもそも外務省が政府の災害対策本部の中に入っておらず、受け入れの判断や調整の仕組みが明文化されていなかった。


このとき政府間で日本が公式に受け入れたのはフランス、スイスの救援隊など。しかし、出動希望から受け入れを伝えるまでに、数日かかった。

フランスは震災当日に出発の態勢を整えたが、日本政府は2日以上たってから受け入れを伝えたため、現地入りは5日目になった。


現地のニーズにあわなかったり、かえって負担になったりする例もあった。

レスキュー隊が、本来の任務ではない倒壊家屋の整理にあたった、1人の外国人医師に通訳・調整のため日本側から3人が付き添う必要があった──などだ。


外務省は今回、地震直後に受け入れの方向で調整を始め、翌日に外相の松本剛明が正式に表明した。


「海外隊の世話まで手が回らない」といった消極論も政府内にあったが、海外の支援も必要な大災害であること、支援の申し出を断ると日本に対するネガティブなイメージを与えかねない点を考慮した。


今回、112の国・地域及び国際機関が人員、物資の支援を申し入れた。実際に救助隊と医療チームを派遣したのは19の国と地域(3月30日現在)。

 

受け入れはどのように決まったのか。

 

外務省と官邸で調整

外国政府からの救援隊派遣の申し出は、在京大使館や在外公館などのルートを通してまず、外務省の「西欧課」などの各地域課に伝えられる。


各地域課は今回、

(1)食料や移動などで手助けを必要としない「自己完結型」のチームか

(2)がれきの下からの生存者を救出できる捜索犬の派遣もできるか

──の2点を重視していることを相手国に確認。この時点で、辞退する国もあった。


各国の救援隊についての情報は、外務省の官房総務課がとりまとめ、官邸の緊急災害対策本部と共有する。対策本部は、各省庁出身の官僚ら100人規模で構成。

ここで、総務省を通じて自治体の被害状況や要望を吸い上げながら、救助活動にあたる警察庁や消防庁、自衛隊と情報を交換する。

 

その結果を外務省の各地域課を通してそれぞれの国へ伝え、その後、各国が実際に派遣する。

緊急を要することから、国によっては日本側の確認を待たず、とりあえず出発する場合もある。


欧米の赤十字にあたるトルコの赤新月社の先遣隊2人は地震から5時間後に飛行機に乗り、翌日には日本に到着した。しかし、緊急車両でないと警察にとめられたり、出向いた県庁は混乱していたりした。

 

「省庁間の調整で手間取って、受け入れ態勢が整っていないのでは」と感じたという。外務省幹部は「全体的に受け入れはスムーズにいったが、半日くらい遅れたことはあったかもしれない」と話している。


日本は、これまでの外交関係も考慮。米国や韓国からの救援隊を優先的に受け入れた。韓国は救助隊の能力が高く、被災した在日韓国人も多いと想定された。


一方、海外からの物資は被災地に届くまでかなりの時間がかかっている。

「水や食べ物などは日本の基準や被災地のニーズにあうかなど調整が必要で、すぐに現地に運べないのが現状だ」(外務省)という。


(梶原みずほ)

(文中敬称略)

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