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デジタル化の波

[Part1]

ジョナス・ベンディクセン Jonas Bendiksen

 

 

 

33歳の若さで、世界で活躍する写真家集団「マグナム・フォト」の会長を務める。

マグナムは、スペイン内戦や第2次大戦の写真で知られるロバート・キャパらが1947年に設立。「LIFE」「TIME」などの有名誌紙上で写真史に残る作品を発表してきた。


紙媒体の経営環境が厳しい昨今、新聞や雑誌からの発注で撮影し、その写真が1面や巻頭を飾るというビジネスモデルは通用しにくくなっている。ただオファーを待つのではなく、写真家の方からアイデアを売り込む姿勢が欠かせないとベンディクセンはいう。「日々のニュースで報じられにくいできごとを掘り起こすことに価値がある」と考えているからだ。


会員の写真家は、芸術系から報道系、商業系まで幅広い。組織として管理している写真の品質は世界最高級だ、と自負している。ベンディクセンの頭にあるのは、多くの人に「マグナム」ブランドの写真を届けるにはどうすべきか、だ。


影響力という面では、ネットのパワーを肌で感じている。
世界4都市のスラム街を取材した代表作「THE PLACES WE LIVE」は7言語で計2万5000部を出版した。ところが、この写真集について有名ブロガーがネット上でつぶやくと、1日4万人が自らの公式サイトに殺到した。「ネットの活用なしにマグナムブランドの将来はない」と確信する。


その一方でネットは、アマチュアが写真を発表することも容易にした。プロとアマの境界はどこにあるのか尋ねると、「写真にアイデアや物語、深さを加味できるかどうかだ」と答えた。プロがアマと違うのは、あらかじめ時間をかけて下調べをし、どんな物語を伝えられるのかをじっくり練ることだとベンディクセンは説明する。


1日にウェブ上にアップされる写真が数千万枚ともいわれるいま、「プロが写真にこめた物語を理解できる目をもつ人が増えている」。


マグナムは、新たな道も探っている。動画や音声と写真を組み合わせた作品を発表するサイト「マグナム・イン・モーション」を立ち上げた。ベンディクセンみずからも、4カ国のスラム街で撮った住居の写真を四方の壁に映し出し、録音した住民たちの肉声を観客に聴かせるイベントを催した。


こうした新たな試みも、「写真がなければ成立しない」という。何かを伝えようとする時、その周辺には必ず写真がある、との思いは強い。「写真は死んだという人もいるが、生き残りをかけているのは写真ビジネス。写真そのものの力はむしろ増していく」

 

(築島稔)

 

(文中敬称略)

 

[写真家への質問]
〈1〉いつも使っているカメラは?/〈2〉撮りたいものは?/〈3〉写真はどうなるのでしょうか?

[質問への回答]
〈1〉キヤノンEOS 5DとオリンパスPEN
〈2〉現象として見えにくい、環境問題の写真
〈3〉デジタルメディアの中で、写真はこれまで以上に力強いものになる

 

1977年ノルウェー生まれ。
2003年に国際写真センター(ICP)新人賞。
10年からマグナム・フォト会長。
代表作に、旧ソ連の生活を取材した「Satellites」など。

 

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