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Memo01

音の職人(1)

金井隆 「アンプづくり」が鍛えた耳

ソニーの品川テクノロジーセンターの23階に、「金井ルーム」と呼ばれる部屋がある。ここでAVアンプの音の作り込みをしているのが、ホームエンタテインメント事業本部の金井隆(56)だ。

「Chief Distinguished Engineer」の肩書を持つ金井の「耳」は、多数のオーディオファンに熱烈に支持されている。自らのホームページでほめた音楽ソフトはファンが競って買いに走るため、大手ネット通販でも一時的に品薄になるほどだ。

 

金井ルームで、まずかけたCDはベートーベンのピアノソナタ。2チャンネルで美しい旋律が流れたが、「やわらかい音だが、奥行きは1メートルくらいしかない」と手厳しい。次に、同じ曲をマルチチャンネルアンプで聴く。音が、はっきりと変わった。「奥行きが出たでしょう。ピアノがきちんと横に置いてある」

音を増幅するアンプの進化には、「優秀な録音が欠かせない」と言う。小沢征爾指揮のベルリン・フィルによるチャイコフスキー「悲愴(ひ・そう)」のブルーレイディスクをかけた金井が「ここ!」と叫んだのは、ティンパニ奏者がバチを持ち替えたシーン。「たたく物が変わったから当然、音も変わる。見えたら違いが聴こえないといけないから、アンプのシャーシ(フレーム)を硬くしたり、チューニングしたりして、必死に音を直した」

小学生のころ、父親が買った真空管式テープレコーダーがきっかけでオーディオに目覚めた。高校時代は高校紛争で4カ月間授業がなかったので、レコードプレーヤーを自作。これでアンプにはまった。大学では交流理論や電気計測など、アンプ作りに関係のある講義は満点。「でも、電磁気学は落第。アンプに関係ないもん」

海外の技術者らとも交流のある金井は、「音のとらえ方は東西でかなり違う」という。日本人は「音の空気」を完全に再現しようとし、高周波にも敏感だ。欧米は逆に、低音が鮮明に聞こえないといけないという。

(文中敬称略)

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