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「音探し」の新次元 時代・文化を映す音

[Part2] 「若者よけ」のモスキート音、課題は利用ルール

 

 

5年前のある日、英国人実業家のハワード・ステープルトン(43)は、15歳の娘におつかいを頼んだ。帰宅した娘は、「店の前に不良がたくさんいて、嫌がらせをされた。怖かった」と訴えた。

「店先から平和に若者を退散させる方法はないだろうか」と考えながら、ふと自分が12歳のころの体験を思い出した。父親のいた電池製造会社で、工場内の一室に入ったとたん、耐え難い高音が頭に響いて気分が悪くなった。

従業員らに「ひどいノイズがする」と伝えたが、「何も聞こえない」と言う。「プラスチック電池を加工する部屋だった。超音波溶接で、大人には聞こえない20kHzの高周波音が流れていたのさ」


人間の耳は、年齢が高くなるほど高周波の音が聞こえにくくなる。大人に聞こえない不快な音を使えば、「若者よけ」の装置ができるのではないか。6歳から15歳まで4人いた自分の子供を使って実験すると、最も嫌がった周波数は約17kHz。蚊が飛ぶような音であることから「モスキート」と名付け、タイマーを付けて1台500ポンド(約6万7000円)で売り始めた。

 

 

「びっくりしたよ。店の前で騒いでいた20人以上のガキどもが、スイッチを入れて1分もたたないうちに離れ始めたんだから」と話すのは、モスキート付き店舗の第1号で英西部ウェールズのコンビニエンスストアのオーナー、ロブ・ゴフ(38)。入り口の上に設置し、学校が終わる午後3時半ごろから夜中すぎまで流している。

以前はたむろする高校生らがドアを壊したり、集団万引きをしたりして、ひんぱんに警察を呼んだという。

モスキートはこれまでに、欧州や米国などで約5000台売れた。ステープルトンは2006年、「人々を笑わせ、考えさせてくれた研究」に贈られるイグ・ノーベル賞を受賞した。

英国などでは「健康に悪影響を及ぼす」と設置に反対する声もあるが、ステープルトンは「長時間聞かせない限り、影響はない」と話す。「若者差別だ」との意見には、「不良を追い払う代替法があるか」と反論する。

一方で、高校生たちが携帯電話の着信音にして教師に隠れて授業中にメールをやりとりするなど、意外な展開も。「ルールを作って有効利用すべき音」というのがステープルトンの主張だ。

(文中敬称略)

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