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スウェーデンの社会保障給付費は国内総生産(GDP)の29%にのぼる。日本よりも11ポイントも高い。手厚い福祉を実行できるのは、税率25%の消費税(付加価値税)や所得税の高い税収があるためだが、富を生む企業が強いことも大きい。
世界経済フォーラムの「競争力ランキング」で、スウェーデンは4位。日本の8位を上回る。景気が悪くなると「中小企業支援」が繰り返される日本と違い、スウェーデンは、稼げない企業を淘汰する冷徹な面をもつ。
「政府は冷たかったよ。個別業界の救済なんて絶対にしない」。スウェーデンの自動車大手、サーブ出身の労働組合幹部、ヴェリペッカ・サイケラは振り返った。
2008年の金融危機は、ボルボ、サーブなどの自動車産業を直撃。秋から、大量解雇が始まった。ルールさえ守れば、需要低迷が理由の人減らし自体は容易なのだ。
米国では、政府がゼネラル・モーターズ(GM)の救済に乗り出したが、傘下のサーブは売りに出され、その行方が注目を集めた。09年2月、スウェーデンの産業大臣が会見で言い切った。
「自動車生産以外のことに従事する心づもりを、今からしておいてほしい」
解雇に歯止めをかけようとサイケラの労組は、上部団体の全国労働組合総連合(LO、日本の連合にあたる組織)に内緒で、経営者側と交渉。給与の2割カットを受け入れた。「発表1時間前にLOに通告したら、彼らは怒ってね。まともに給料を払えない会社はつぶれても仕方ない、って言うんだよ」とサイケラ。
雇用を守るための賃下げ。日本では当たり前だが、スウェーデンの労組にとっては原則からの逸脱だ。なぜか。
この国では、同一労働・同一賃金が原則で、水準は労使の中央交渉で決まる。もうかっている企業も、そうでない企業も、同じ職種の社員には同レベルの賃金を払う。払えない企業は淘汰(とうた)される。労働者は失業するが、政府の支援で職業訓練を受けて、生産性の高い企業に移る。結果として、経済全体の効率も高まる――。LOの理論家たちが唱えてきた経済モデルだ。
そのモデルが、従業員500人以上の企業に、被用者の5割が集中する大企業中心の経済構造をつくり出した。
「企業側は、高い賃金を払うだけの生産性を確保するため、設備投資を迫られる。中小の新興企業はその余力がないから淘汰されてしまう」。企業連盟のエコノミスト、ビョーン・リンドグレーンは複雑な表情だ。売上高で上位50位の企業は、すべて1970年より前の設立だ。
弱い企業を保護して、国の経済が沈んでは、社会保障が維持できない――。合理的な思想が、そこにはある。
(文中敬称略)