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「画面で読んでも頭に入らない。やっぱり紙でないと」。パソコンが普及した今も、職場で「紙か電子か」の議論になると、そんな意見がかわされる。
場所によって明るさが違う日常生活では、反射式の画面のほうが液晶より目にやさしいのは確かだ。だが、読解や思考、あるいは快適さといった「脳」での認知の仕方も、紙と電子画面では本質的に違うのだろうか。さまざまな研究が始まっている。
「素材の違いだけでなく表示の仕方の違いを考える必要がある」と話すのは、東海大学工学部教授の面谷信だ。二つの実験を紹介しよう。
被験者に同じ文章を読んでもらう。まず、(1)ウェブサイトのように一画面に収まりきらない文章を、上に送りながら読み取るスクロール方式(2)紙のように「ページ」として文章が表示された画面を切り替えながら読み取る方式、の2種類に分ける。
さらに読んだ後、内容について設問に答えてもらう際に、(ア)文章を読み返さずに回答する(イ)文章を参照しながら回答する、という条件に分けて、正解率と作業時間の双方から作業効率を測る。
すると(ア)の場合はスクロール式のほうが優位だが、(イ)だとページ式のほうが正解率が高く、作業時間は短くて済み、全体的な作業効率も高かった(グラフ1参照)。内容を把握したり読み返したりするときに、「2ページ目の、あのあたり」といった構成感覚が、記憶の手助けをするからだ。
もう一つの実験では、画面を見ながら4ページの文書を校正してもらう。今度は、(1)一度に半ページ分を表示(2)一度に1ページを表示(3)1画面に2ページを同時表示(4)2ページ表示の画面が二つあり、4ページ分を同時に表示、という四つの条件を設定。誤りの発見率と所要時間を計った。
結果はグラフ2のとおり。一度に閲覧できるページの面積が広がるほど作業効率は高くなった。同じ実験を20代前半と40歳以上に試してもらったが、年齢差はほとんど出なかった。
「紙か電子かの比較は、結局、記憶しやすい表示かどうかという点と関係しています。人間の脳は、長期的な記憶力には長(た)けているが、一時的な記憶容量は意外に小さい。ふつうの人だと一度に覚えられる数字は6、7ケタ程度でしょう。スクロール式だと、一度に目に入る文章が限られ、たどって読むと時間がかかるため、読んだ内容を忘れていってしまうのです」
紙は形をともなうし、何枚ものページを一度に見るのに便利だ。また、水平に置いたり、寝ころんで読んだりもできる。好きな姿勢で扱えることも、快適さと結びつくという。電子メディアがこうした紙のもつ表示特性をもっと取り込んでいけば、その差は埋まっていく可能性が高い。
逆に、紙を節約するためだけに電子化を強制すれば、作業や勉強の効率が落ちてしまう可能性もある。面谷は「職場や教育現場で電子化を進める場合、検索機能の活用など、電子端末ならではの総合的な効率性を発揮できるような工夫が不可欠」と話す。
(文中敬称略)