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影薄い日本

[Part2] 新時代の電子産業 ネットワーク力が鍵に

基盤技術を積み上げる台湾、ものづくり大国の道を突き進む中国、その製造力を活用し、新しい市場を生み出す米国。そのはざまで存在感を失いつつある日本の電子産業には、なにが必要なのか。

ともすれば「ものづくり再興」をめざし、その技術力を磨き上げることを唱える声が多いなか、米国を拠点にソニーの電子ブック事業を統括する野口不二夫は「ものづくりに、コンテンツやネットワークを一体化させることが重要ではないか」と考えている。

ソニーの電子ブック事業を統括する野口不二夫は、これまで音楽配信、音楽端末など、ハードとソフト、その双方にかかわってきた。その経験が、電子ブック事業にも、活用できるという=田中郁也撮影

「ものづくりの再定義」ともいえるだろうか。それを痛感したのは、米国の電子ブック市場でアマゾンの巧みなネットワーク戦略を目の当たりにしたからだ。

もともと、電子ブック端末は日本で生まれ、米国市場でもソニーが最初に販売した商品だ。だが、人気に火をつけたのは、1年遅れで参入したアマゾンのKindleだった。なぜ、逆転を許したのか。

アマゾンの戦略はシンプルだった。(1)Kindleに通信機能をつけ、端末から直接、書籍を買えるようにする。(2)購入時にかかる通信代は、アマゾンが負担する――。

それまでの電子ブック端末は、パソコン経由でしか書籍データを読み込めなかった。そこに通信機能をつけ、負担をアマゾン持ちとすることで、利用者は手元に端末さえあれば、いつでもどこでも通信コストを気にすることなく書籍を購入できるようになった。

特に二つ目の戦略は、野口にとって予想外だった。通信代を負担して、黒字になるのだろうか。

だが、よく考えれば、電子書籍はほとんどがモノクロで文字中心のため、1冊丸ごとダウンロードしても、データ量は音楽1曲分の4分の1程度にしかならない。通信コストは大きくはないのだ。「電子ブックならではの手法なんです。それも、コンテンツと端末を一体運営していればこその発想だった」と野口は振り返る。

任天堂の携帯ゲーム端末、ニンテンドーDSi =池田良撮影。同社は、コンテンツとネットワーク、端末の三位一体のビジネスモデルを展開する、数少ない日本メーカーだ。

インターネットの普及とともに、米国のIT産業はソフトウエアやネットワークサービスへの比重を高めている。ものづくりは台湾、中国にゆだね、自らは商品のデザインやコンテンツ、ネットサービスに力点を置く――。IBMがパソコン事業を中国企業に売却したのも、アップルがiPhoneやiPadの製造を外注し、ソフトウエアやコンテンツの充実に注力するのも、その流れの一環だ。

アマゾンに後れをとったソニーはいま、別々に運営していた端末販売とコンテンツ配信を一体化し、新製品に通信機能を付け加えて巻き返しの態勢を整えた。「私たちは、ともすると端末づくりに重きをおいてしまう。でも、それでは米国勢に対抗できない」と野口は言う。「同じ視点にたつことで、相手が何を考えているか、推測しやすくなる。アマゾンやアップル、グーグルの次の一手は何かな、と」

(文中敬称略)

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