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市販のプリンターの印刷ドットは直径約0.025ミリ、細胞1個とほぼ同じサイズ。だったら、インクの代わりに細胞を入れて、プリントできないか……。
富山大学工学部生命工学科教授の中村真人が、こんなアイデアを思いついたのは、2001年のこと。プリンターを買い込んで、カートリッジからインクを抜き取り、赤血球を入れた培養液を入れて試してみた。
この「血で文字を書く」実験は、1回も成功しないまま、3回目でプリンターが目詰まりを起こしたが、「生きた細胞で、人工臓器を構築する」という夢の出発点となった。
中村はもともと小児科の医師。重い心臓病を患う子どもを救えなかった経験が、36歳で人工心臓の研究者へと転身させた。

神奈川科学技術アカデミーの支援を受け研究を進めた。塩化カルシウムの水溶液に、3次元で動くプリンターのヘッドから、細胞を含んだアルギン酸ナトリウムを打ち出すと、次々とゲル状になって位置が固定される。この性質を生かして、髪の毛とほぼ同じ直径0.1ミリのチューブをつくったり、異なる素材を層状に積み重ねたりできるところまで来た。
多種類の材料を使って、より複雑な3次元の構築物をつくるバイオプリンティングの技術を極めれば、毛細血管が縦横に張り巡らされた臓器をつくれるようになる。自分の生きた細胞を培養してつくれば血液からエネルギーを補給し、外部からモーターを電気で動かす必要もなくなる。子どもの体とともに臓器も成長し、入れ替えの手術も必要ない。研究費の確保など環境が整えば、「究極の人工臓器」の実現は20年後と中村は予測する。
「インクジェットプリンターによるA4の紙1枚に印刷できるドット数は1億超。人体の組織1立方センチを構成する細胞の数に相当する。この技術はすごい」と中村。日本が持つ最先端の技術を使えば、世界一の人工臓器をつくることができる。そう確信している。
(文中敬称略)
畑川剛毅(はたかわ・たけし)
1960年生まれ。経済部記者、asahi.comデスクなどを経て、夕刊フィーチャー編集グループ記者
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村山知博(むらやま・ともひろ)
65年生まれ。科学部、アメリカ総局員などを経て論説委員兼GLOBE記者
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浅井文和(あさい・ふみかず)
58年生まれ。科学部、医療グループを経て編集委員
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浜田陽太郎(はまだ・ようたろう)
66年生まれ。経済部、生活グループを経て、GLOBE副編集長
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カタリナ・エアフート(Katharina Erfurth)
83年生まれ。ベルリンのゴールデン・セクション・グラフィックス所属