TOPへ
RSS

ガラパゴス化か世界か

[Part1] 日本人の洋画離れとハリウッドメジャーの試み


いま、若いカップルが大挙して邦画に押し寄せている。一昔前までは邦画は、格好悪いイメージの代名詞だったが、日本映画製作者連盟(映連)が発表した2009年の映画概況によると、邦画と洋画の興行収入のシェアは57対43。邦高洋低は2年連続だ。02年は27対73だったので、洋画の落ち込みの激しさが分かる。

 

ハリウッドメジャーのしにせ、ワーナー・ブラザース社でエグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるリチャード・フォックスによると、自国の映画に関心が高まり、ハリウッド映画が不振に陥るのは世界的な傾向だという。「『ハリー・ポッター』のようなメガヒット作品は今も変わらないが、中規模の作品が軒並み興行成績を落としている」。観客を呼べるスターがいなくなったこと、CG優先の映画作りが飽きられたこと、米国文化の地位が低下したことなどが原因に挙げられている。

そんな状況下でワーナーの取った対策は、それぞれの国に自国映画を製作するローカルプロダクション部門を設置することだった。10年ほど前に欧州からスタートし、インドの「チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ」、フランスの「ロング・エンゲージメント」「ココ・アヴァン・シャネル」など、実績を重ねている。

約10カ国目となる日本では、07年にフジテレビの人気プロデューサーだった小岩井宏悦をスカウト。既存の映画会社と組んでいくつかの作品を発表してきた。そして、今年12月公開予定の「最後の忠臣蔵」(杉田成道監督)で、自らが幹事社となって製作委員会を立ち上げ、日本映画の製作に本格参入する。フォックスは言う。「日本の市場は特殊なので少し遅くなったが、これは試行期間ではない。日本映画が存在する限り我々も日本映画を作り続けていきたい」

「最後の忠臣蔵」は池宮彰一郎の原作を、「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」の田中陽造が脚色。赤穂浪士の吉良邸討ち入り後に、それぞれ特命を帯びて生き残った2人の武士の人情物語。役所広司と佐藤浩市らが出演する。大人向きで渋い内容になりそうだ。

ハリウッドメジャーのワーナー・ブラザーズが幹事社を務める日本映画「最後の忠臣蔵」。(C)2010「最後の忠臣蔵」製作委員会。今年12月、丸の内ピカデリーほか、全国ロードショー予定

 

「ハリウッドは、CGを見せるだけの子供だましの映画を量産し、世界の観客を失っていった」と小岩井は見る。「そのことに今、ハリウッド自身が気づき始めた。日本のローカルプロダクションもその流れの中にある。もちろんいい映画が当たるとは限らないし、その逆になることも少なくない。ただ、観客の年齢層が上がると、いい映画が当たる確率がそれだけ高くなる」

ワーナーとして年間10本くらいの日本映画をコンスタントに作っていきたいという。「内容についてはアニメも含めて様々なものに挑んでいきたい。ミニシアター系の作品は想定していない。ワーナーが作るのだから、公開規模100スクリーン以上で、興行収入10億円以上を目指せる作品になる」

他のハリウッドメジャーも日本映画の製作に関心を寄せている。昨年、20世紀フォックスが「サイドウェイズ」を、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントが「レイン・フォール/雨の牙」を製作した。今年末は、「ノルウェイの森」や木村拓哉主演の「ヤマト」など話題作が続く。洋画ではワーナー自身の「ハリー・ポッター」も控える。その中で「最後の忠臣蔵」がどんな戦いを見せるか。他のハリウッドメジャーも日本の大手映画会社もその成否を注目している。

(文中敬称略)

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長 新創刊のあいさつ

このページの先頭へ