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Memo03

数学と社会/「数学の誤用」 監視も必要


産業と数学の急接近を、数学界全体が歓迎しているわけではない。特に、美や真理に魅せられた数学者にとっては「数学は実社会に役立たないからこそ、純粋で美しい」との美意識が根強い。

近代日本の代表的な数学者、高木貞治は、数学の社会への貢献の必要性を説きつつ、「『実用』と言っても、本当には実用にはならない。実用的というのは、つまり融通が利かないということだ」と語った。目先の実利で「応用」を考えた数学は、大成しないというわけだ。

コンピューターの原理を考案した数学者フォン・ノイマンは、原爆開発のマンハッタン計画で中心的役割を果たした。一方で、同時期に活躍した数学者、ノーバート・ウィナーは戦後、「もし研究が無責任な軍関係者の手に渡れば、必ず害になる」として、軍や兵器開発への協力を拒絶し、医療分野などへの応用を望んだとされる。

数学者で哲学者のバートランド・ラッセルは反核・反戦運動を展開。「ラッセル・アインシュタイン宣言」を出した。これには湯川秀樹も参加した。学生時代に物理を専攻した応用数学者の津田一郎・北大教授は「核分裂を自然現象として記述するのはいいが、爆弾に使うといった瞬間に悪魔になる。数学や科学が持つ『美意識』とは違うモラルが要求される」と話す。

数学者の遠山啓はかつて「数学の役割の増大に伴い、数学者の社会的役割も増大する。社会的にどのような責任をとるべきか、議論せねばならない」と主張。「数学の誤用がいかに大きな害を社会に及ぼしうるかも知っておかねばならない」と指摘した。

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