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私と数学、そして

[Part3] 

【宇宙の謎】 6次元幾何学が暗黒を解き明かすか

              東大数物連携宇宙研究機構長 村山斉


村山斉さん

――2007年にできた機構のトップに招かれました。何をめざしているのですか。

村山 ガリレオは「宇宙という壮大な書物は数学の言葉で書かれていて、数学抜きではその一言も理解できない」と言っています。宇宙は何でできているのか、どのように始まり、その運命はどうなるのか。宇宙の統一理論に、数学、物理、天文の3分野を融合して、その謎に迫ろうというのが機構の狙いです。

最大の謎は、宇宙全体の96%は暗黒物質、暗黒エネルギーという未知の存在で占められているということです。それまでは、宇宙も地球上の物質と同じものでできていると考えられてきたのですが、それが人工衛星などの観測で03年に根底から覆されました。天動説が地動説になるくらいの驚きでした。

暗黒の正体は何か。これを理解するには、新しい数学の力が必要になる。機構には純粋数学者や物理学者、天文学者など約80人が専任で参加。外国のフィールズ賞受賞者とも連携し、謎に取り組んでいます。

暗黒物質は奇妙なことに、我々が知っているより重い粒子で、光を出さない。重いということはアインシュタインの特殊相対性理論により、静止エネルギーがある。止まっていてもエネルギーがあるということは、我々の目には見えない次元で、暗黒物質が走っているのではないか。空間は3次元ではなく、本当は9次元で、3次元のほかに、6次元空間がある。それはどのような性質があるのか。自然界とは関係ないと思われていた数学の6次元の幾何学が、暗黒の謎を解き明かすのに登場してくる。

――逆に、物理学が数学の新発見を促すこともある?

 

村山 その通りです。最近のフィールズ賞を受賞した研究は、素粒子物理から触発されたものが半分くらいある。東大では、数学の数理科学研究科は駒場にあり、 物理の理学系研究科は本郷にある。ほとんど出会う機会もなかったが、両者で互いに助け合い、宇宙の新しいパラダイムを解き明かそうというわけです。


――機構では、様々な分野の学者が集まる「お茶の時間」があるそうですね。

村山 「ティータイム」は欧米では当たり前。アインシュタインがいた米国のプ
リンストン高等研究所に私が籍を置いた時、ティータイムがあって、数学
者や物理学者、さらには歴史や音楽の人も顔を出していました。風呂に入っている時とか、
食事をしている時に閃いたという逸話もあるが、お茶の時間の世間話で、
研究の新しいアイデアが突然生まれるということが現実にある。そういう機
会を設けたいと思ったのです。


村山斉 (むらやま・ひとし)

 

1964年生まれ。
東大院博士課程修了後、東北大助手、カリフォルニア大バークレー校教授などを経て2007年より現職。専門は素粒子物理学。幼少のころは病弱で学校を休むことが多かったが、算数・数学の世界に引き込まれ、小学2、3年で微分・積分に手をつけたという。

 

 

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