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私と数学、そして

[Part2] 

【音楽】 心が震え、生きていると実感

                ジャズピアニスト 中島さち子


中島さち子さん

――数学との出会いは。

中島 中学1年の時に数学の先生から幾何学の「シムソンの定理」を教わり、その美しさに魅せられ、急激に数学に傾斜していきました。もともとしつこい性格で、一つのことを徹底的にやるタイプ。それが数学に向いていたのかもしれません。

――高校生の時、数学オリンピックで金メダルを受賞しましたね。

中島 日本からは最終的には出場者6人に絞られるのですが、世界大会では、80近くの国から450人ほどの数学好きな人が同じ建物に集います。文化交流としても、とても面白い体験でした。

――数学の魅力とはなんですか。

中島 数学がもつロマンに触れることと、問題に悪戦苦闘しながら「閃いた!」という瞬間が、最大の魅力です。山登りに例えると、霧のかかった山や森に入ると、最初は戸惑いますが、すそ野が徐々に見えてくる。霧も晴れてくる。

すると、違う道と思っていたのが実はつながっていたり、似ていると思ったのが全く別だったりすることに気づきます。全体像が見えると、新しい世界が開 けるのです。

――数学と音楽が似ているところは?

中島 小さい頃から、ピアノや作曲も好きで、大学ではジャズ研やビッグバンドに入りました。言葉ではなく、空気や波動、エネルギーで会話をし、「生きている!」という実感を感じ取れるヒューマニスティックな音楽の世界に魅せられました。当初は数学との両立も考えましたが、どちらの世界も甘くはない。悩んだあげく、音楽の世界に進みました。

 

音楽の中で「数」の存在を体験することもあります。例えば、一小節の世界の中でも、3、4拍子に限らず、5や7、13といった拍子が同時に混在すると、個々の素数独特の味わいが音楽を鮮やかに彩る。既存の概念にとらわれず、本質に近づいていこうとすることで新たな世界が開ける。結果を求めたり、お金もうけをしたりするという意味では、両方とも無意味かもしれないが、だからこそ本質に近づける。心が震え、「生きている」という実感が持てるというのが、数学と音楽の共通点ではないでしょうか。

――数学が好きになるにはどうしたら?

中島 本当に好きになるには時間的、精神的な余裕が必要です。πを「3」として計算する「ゆとり教育」がありましたが、それは本質ではない。「ゆとり」というなら例えば、πを10桁まで計算してみる。そうすれば、「無理数」の不思議さも実感でき、数学の神秘に触れられる。

数学は思考と感動の学問。教える側もあきらめず、小さなことでも「わかった!」と体験させることが必要だと思います。


中島さち子 (なかじま・さちこ)

 

1979年生まれ。
フェリス女学院高在学中の96年、国際数学オリンピックで金メダ ルを獲得。
数学者に交じり「ゼータの世界」(日本評論社)を一部執筆。東大数学科卒。
7日に中島さち子TRIOファーストアルバム「REJOICE」を発売。



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