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[Webオリジナル]結婚と少子化の間で

[第4回] 相手に求める条件が柔軟に。婚活は学歴の壁なくし出会い広げる

ポーリン・ストローハンさん シンガポール国立大人文社会学部准教授

シンガポールの晩婚・未婚、少子化に関する多くの論文を発表。国が民間の「婚活」業者を公認する際、選定にあたった委員の1人でもあったポーリン・ストローハン准教授に、少子化対策に対する評価や今後の課題などを聞いた。
(2009年12月15日、シンガポール国立大で。聞き手・原島由美子)

 

──シンガポールの晩婚・未婚化、少子化の原因をどう分析されますか。

Paulin Straughan
1963年生まれ。85年にシンガポール国立大(NUS)卒、90年に米バージニア大で社会学の博士号を取得。現在、NUS社会学部の副学部長。2人の息子の母親でもある。

ポーリン・ストローハン シンガポールは独立後、経済最優先で急速に発展してきました。国の歴史を反映して、人々もすべてを経済的視点でとらえがちで、結婚よりも、キャリア構築を優先してしまう。自分のポジションが上がれば、収入も上がる。欲望に上限はなく、いつまでも満足できないのです。

異性の知人・友人の中から、生涯の伴侶にふさわしい人を見極めるには、ある程度の心と時間の余裕が必要です。でもシンガポール人は止まることを知らない。みんな忙しすぎます。

これは日本も同じかもしれませんが、時代が変わっても、男性は未だに、相手の女性に若さや容姿、自分よりちょっと下の学歴と収入、という条件を求めるなど、伝統的価値観にとらわれている。社会的地位が上がり、より高い収入を得るようになった女性も、学歴、職業などの面で理想とマッチする男性を見つけるまで妥協しなかった。

その結果、高学歴・高収入な女性と、低学歴・低収入の男性が、なかなか相手を見つけられない。でも国内で相手がいない男性は、近隣のアジア諸国で若い花嫁を見つけてきます。しかし、高学歴のシンガポール人女性はそうはいかない。高学歴女性の晩婚、未婚化が、最大の課題になったのです。


──それが、国は84年に、国営の「婚活支援機関」として、大卒以上対象のSDU、翌年に大卒未満対象のSDS(現SDN)を誕生させた背景なのでしょうか。
ストローハン 政府は、それぞれの条件にあった相手を、素早く、的確に見つける手助けをしたかったのです。国営ならば、国民も安心して利用できます。

最近、学歴が高い女性の考えが柔軟的になってきました。以前は「私より背が高く、学歴、収入も良く、同じような家族、社会的属性を持っている人」を求めるなど、保守的な考え方が強かった。でも今は「高いIQは必須条件ではない。気楽に喜怒哀楽を共にできる人がいい」と言う声が増えてきた。

国も国民も「ある程度の学力があり、育った環境が似ている男女ならば、マッチングしやすい」と気づいたのです。もともと学歴で分ける必要はなかった。だから昨年、SDUとSDSを統合してSDNとし、学歴の壁をなくして、出会う相手の幅を広げたのです。


──シンガポールは結婚奨励や少子化対策に積極的ですが、出生率は日本より低いです。なかなか効果が表れていないように見えますが。
ストローハン 「ロマンシング・シンガポール」といった国を挙げての恋愛奨励キャンペーンも展開しましたが、人々の価値観や生活様式はそう簡単に変わりません。私的でデリケートな問題に国が干渉することに対し、否定的な見方をする若者もいます。

実際、私の授業で学生にSDNを利用することを勧めても、「あり得ない」とばかり失笑したり、嫌悪感を示したりといった反応があります。気恥ずかしさに加えて、偏見や先入観もあるのでしょう。

国も、そうした傾向にだんだん気づき始め、SDNと一部の民間業者と連携して、サービスを提供し始めました。会員数もイベント数も増えたので、出会いの幅も広がり、一定の成果を上げているようです。

出生率が低いままだから失敗とは言い切れません。政府が対策に消極的だったら、出生率はもっと下がっていたかもしれません。

一方、シンガポールでは、結婚奨励や少子化対策を重視するあまり、高齢者対策が遅れている。少子化と高齢化は一体で、分けられる問題ではありません。課題は多いですね。


──国家主導の厳しい学歴社会のもと、子どものころから親の期待を背負って勉強ばかりしていると、恋愛ができない大人に育ってしまう、という指摘もあります。

ストローハン 子どもの競争は親の競争でもあります。「子どもには最高の教育を与えたい」と投資を惜しまない。すると家庭内の教育費は高くなり、「子どもの数は少なくていい。1人ひとりに、たっぷりお金をかけて、成功させてあげたい」となる。先行投資をすれば、後で大きなリターンがもたらされる、と信じているのです。だから子どもが1、2歳の時から、「こうすべき」「こうあるべき」と押しつけすぎてしまう。


──シンガポールの結婚の約40%が国際結婚です。かなり高い割合ですが、問題は起きていないのでしょうか。

ストローハン シンガポールは人口約500万人の小国。中華系、マレー系、インド系が混在し、日本のように単一民族国家ではありません。人種、民族のバランスが大切で、国民になるなら英語力が必須です。移民や外国人が増えすぎると、狭い国土が混雑してしまいますし、国のアイデンティティが揺らぎます。国際結婚が、晩婚・未婚、少子化の切り札ではありません。シンガポール人同士の結婚を、地道に奨励し続けるべきだと思っています。

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