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[Webオリジナル]軌道を描いて インタビュー編

[第4回] 「たった一つのシステムに頼るわけにはいかない。そこにガリレオの意義があります」

ルネ・ウスタリンク博士 欧州宇宙機関(ESA)



計画が挫折しかかったこともある。完成予定は大きく遅れ、実現を危ぶむ声もあった。そんな欧州の測位衛星システム「ガリレオ」が、今年末にようやく最初の衛星が打ち上げられるところまできた。難航する一方で、何としてでもやり遂げる、そんな欧州の強い意志があった。欧州にとってガリレオとは? 今後の課題は? 欧州委員会(EC)とともに開発を進める欧州宇宙機関(ESA)でガリレオ計画の指揮を執るルネ・ウスタリンク博士に聞いた。(2009年12月7日、パリ市内のESA本部で)
(聞き手=朝日新聞論説委員 辻篤子


――なぜ「ガリレオ」なのですか。
ルネ・ウスタリンク 米国のGPS(全球測位システム)衛星はなくてはならない存在になっています。しかし、もともとは軍事用のシステムで、民生用にその一部の信号が使われているだけです。何より軍事用途が優先されます。民生用の信号は弱く、妨害にも弱い。信頼性という意味では、あまりよくありません。

ルネ・ウスタリンク博士

これに対してガリレオは、初めから民生用に開発されています。妨害にも強く、信頼性の高いサービスが提供できます。また、GPSは、有事の際などに米軍の都合で使えなくなるおそれがあります。そうなれば大混乱を招きかねません。これだけ重要になってきたシステムですから、たった一つ、しかも信頼性が高いとはいえないシステムだけに頼るわけにはいきません。そこに、欧州がガリレオシステムを開発する理由があります。
GPSとガリレオを合わせて60個の測位衛星があれば、正確な位置情報をとらえられる確率は大いに高まる。世界のユーザーにとって、便利になることは間違いありません。 


―― 現在の進行状況はどうですか。

ウスタリンク 2008年に、ECとESAが費用を折半する、つまり、産業界には頼らずにすべて公の計画で進めることになりました。ESAは4年前にGIOVE―A、2年前にGIOVE―B衛星を打ち上げ、ガリレオのための基礎的な確認実験を続けています。現在は、衛星やロケット、地上設備などについて、企業と契約を結ぶ作業の最終段階に来ています。2010年11月にガリレオシステムの最初の2機、11年初めにさらに2機を打ち上げる予定です。この4機を使って、実際に軌道上でシステムを運用するための確認にとりかかります。その後、順次、衛星を打ち上げていって、2013年からは運用を始める予定です(注:2010年1月7日、EUは運用開始予定を2014年と発表)。


―― 当初、米国はガリレオに反対していました。

ウスタリンク そうです。彼らの手の及ばない別のシステムができるのを嫌がり、ガリレオ計画を止めようとしました。軍事目的の運用に障害が起きることが心配だったのでしょう。今では、協力して互換性を持たせるようにしています。その方が、ユーザーにとっても便利ですから。


―― 中国の「北斗」システムとの間で、利用する周波数が重なっているそうですが。

ウスタリンク 頭の痛い問題です。限られた周波数をどう分かち合って使うか。静止衛星については、国際電気通信連合(ITU)のルールがありますが、測地衛星ではいっさいルールがなく、いわば「紳士協定」でやるしかありません。かつて、米国のGPS衛星との間でも、互いに利用したい周波数が重なる問題があり、4年がかりの大変困難な交渉の末、やっと解決しました。
中国は「我々にも使う権利がある」と主張していましたが、中国の首相から「解決に向けて、互いに話し合おう」という手紙が届き、やっと話し合いが始まりました。私も2009年11月にこの問題で中国へ行ってきたところです。中国でも、技術的な解決策を探す研究が進められているようです。ガリレオの打ち上げが迫っていますので、できるだけ早く決着させたいと思っています。


―― これからの課題は。

ウスタリンク できるだけ早く、安定的な運用を実現させたいと思っています。30もの衛星を運用するとなると、システムとしても複雑になります。技術的な課題を着実に解決していきたいと思っています。

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