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[Webオリジナル]軌道を描いて インタビュー編

[第1回] 「毎日世界から送られてくる40万のデータを分析・カタログ化しています」

リチャード・ボルツ(Richard W. Boltz)大佐

ヴァンデンバーグ米空軍基地 統合宇宙作戦センター部長



米西海岸にある米宇宙軍の拠点、ヴァンデンバーグ空軍基地を訪ね、衛星運用や宇宙監視を担当している統合宇宙作戦センター(Joint Space Operations Center)部長のリチャード・ボルツ(Richard W. Boltz)大佐にインタビューした。(聞き手=朝日新聞論説委員兼編集委員 谷田邦一)


ヴァンデンバーグ基地は3番目に大きな空軍基地だ。敷地内には山林や砂漠まである国立公園のような環境。散在するオフィスは研究所のように静まりかえっており、兵士たちの勤務もコンピューターに向かってのデスクワークが中心のように映った。秘密事項が多い分野だけに、インタビューは事前に提出した質問リストをもとに30分に限定された。ボルツ大佐の受け答えは終始慎重だったが、民生分野がからむ宇宙監視任務については、流ちょうに説明してくれた。

 

――米国が運用している軍用衛星や宇宙システムについて、その種類や数、活動内容を詳しく教えてください。

インタビューに答えるリチャード・ボルツ大佐=谷田邦一撮影

リチャード・ボルツ 私たちは測位衛星(GPS)や通信衛星、ミサイル監視のための早期警戒衛星(DSP)のほか、気象観測や情報収集にも衛星を使っています。一般的に分類すれば5種類になります。また、民間の通信衛星もリース方式で使っています。米政府が所有している衛星は、約150機。世界で活動中の衛星は現在約1300機で、その約10%を占めています。

 

――そのうち軍事衛星はいくつですか。

ボルツ それに答えるのは難しい。

 

――通信衛星や早期警戒衛星は、米軍内でどのように使われていますか。

ボルツ DSPは戦略的なミサイル発射があった場合、早期警戒情報を収集するための衛星です。いくつ持っているかは微妙なので言えません。後継システムとして近くSBIRDというシステムに代わりますが、その地上システムはすでに稼働しています。通信衛星はビデオ情報の送信や通信に使われています。機能は商業衛星と同じです。09年12月には「WGS」という衛星が打ち上げられましたが、とても有能な衛星で、部隊の司令官が直接、現場の兵士とコミュニケートすることもできるようになります。

 

――ここヴァンデンバーグ基地では、どのような宇宙活動をしているのですか。

ボルツ 基地のトップは空軍中将で、私はその下で働いています。とても幅の広い任務をしていて、例えばGPSが出す信号の精度を保持する作業をしたり、宇宙監視のための地上レーダーを運用して物体の分類をしたりしています。世界中にある29ヶ所の観測施設からここに毎日約40万ものデータが送られてきて、それらをコンピューターで分析してカタログ化しています。宇宙ごみの軌道を予測して衛星などと衝突するのを避けるためです。衝突しそうになったら、私やここのスタッフたちが関係国に直接、電話や電子メールで連絡します。しかもそうした仕事を無償でやっています。

 

――米軍は宇宙利用について、かつて「宇宙支配(space dominance)」という言葉を使って自国優位の活動方針を打ち出したことがありますね。90年代後半に宇宙軍が発表した「Vision for 2020 」です。SSNの国際協調路線とはどのような関係にあるのですか。

ボルツ 随分前ですが、私も読んだ覚えがあります。その質問はとても大きな質問なので、コロラド州にある宇宙軍司令部に尋ねてほしい。宇宙軍はその後、再編されて戦略軍の傘下に入り、戦略自体が変わったはずです。

 

――米軍は宇宙配備の手段も含め、戦場のISR(情報・監視・偵察)機能に力を入れていると聞きます。一説では、宇宙から低空まで5層の衛星や航空機による監視システムがあるといいます。なぜこうした多層的なシステムが必要なのでしょうか。

ボルツ 私たちはU2(高々度偵察機)やグローバルホーク(戦略無人偵察機)などいくつもの手段をもっていますが、それぞれに固有の特徴があります。衛星は決まった軌道の上を飛んで地上の情報を集めますが、有人機は衛星の軌道上以外の空間にアクセスすることができます。UAVも同じで、しかも24時間の監視が可能です。有人機にはそれができない。それぞれの特徴を集めれば、提供できる情報の総量は1つの手段を使う場合よりずっと有意義になります。

 

――それが今日の米軍戦略の中心概念とされる「network centric war(NCW 、ネットワーク中心型の戦い)」でしょうか。

ボルツ すべてではないが重なる側面はあります。NCWは「リンク」と呼ばれるシステムを用いて、作戦センターが継ぎ目のない情報を集約することを意味します。100万人を超す米軍は軍事技術に支えられており、NCWを通して情報を共有しているのです。

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