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[Webオリジナル]軌道を描いて ルポ編

[第5回] 「トムトム」の冒険


GPSの位置情報を利用するカーナビの市場は、国内外で大きく異なる。TVが見られるなど多くの機能を持ったカーナビを車に据え付けるタイプが先に普及した日本に対して、海外では、持ち運びのできるナビゲーション装置(PND)が主流だ。この2、3年で急成長し、2008年には年間販売台数が4000万台に達した。欧州で約50%、米国でも約20%のシェアを持ち、米国のガーミン社と並んで世界の市場をリードするのが「トムトム」社だ。オランダ・アムステルダムの中央駅に程近い本社を訪ねた。(朝日新聞論説委員 辻篤子)


同社の創立は1991年。モバイル装置用のソフト開発会社としてスタートした。個人用情報端末のソフト開発を手がける中で、安価なナビゲーション装置の需要が大きいと見て、02年に情報端末用のナビゲーションソフトを開発、04年には最初の携帯型のナビゲーション装置を発売した。戦略は見事に当たり、02年に800万ユーロだった年間売上高は、08年には16億7400万ユーロに。驚異的な成長を遂げた。30人程度からスタートした従業員数も、今や3500人に膨れたという。「すべての人のためのナビゲーション」が合い言葉だ。

リアルタイムの道路情報を写しながら説明してくれるトムトムの担当者=辻篤子撮影

トムトムというかわいらしい名前は、覚えてもらいやすいようにと、タイコの音をイメージして決めたそうだ。タイコは位置を知らせるときに使われる道具でもある。

同社の強みは、道路工事などはもちろん、渋滞など刻々と変化する道路状況に応じたルート選定をしてくれるソフトウエア技術だという。道路に設置してあるセンサーからの情報や、携帯電話会社と提携してユーザーが使用している電話の位置といった情報も入手し、総合的に状況を把握する。その都度、どのルートが一番早いか、判断して教えてくれる仕組みだ。

今後は車載型にも触手

ウォルフガング・リーリッツ副社長は「これからは、車載型の装置にも力を入れたい」と言う。消費者に車関連の商品で何がほしいかを尋ねたところ、カーナビは2位を占めたが、市場価格を考慮したランキングでは、10位以下。まだ高い、という印象なのだ。実際、欧州では車載型の搭載は高級車が中心で、大衆車にはほとんど普及していない。それだけに「手頃な価格のシステムには大きな需要がある」とリーリッツ副社長。低価格商品の開発が価格さえ下がれば、数の多い一般車での普及が大いに望める、というわけだ。すでにルノー社と提携し、490ユーロの車載システムを発売した。

昨年末には、日本での携帯型カーナビのトップメーカー、三洋電機と提携した。狙いは、互いの強みを生かした車載型製品の開発。「三洋電機にはオーディオなどの技術がある」とリーリッツ社長が期待すれば、三洋電機コンシューマエレクトロニクスの大庭功車載機器事業部長も、「トムトムのソフトウエア技術や低価格の商品開発力を生かし、欧州や北米などグローバル市場をめざしたい」という。

PNDの普及が100万台を超えているのは、現在のところ、中国、北米、欧州といったところ。出遅れていた日本もようやく100万台に達した。今後、低価格の製品が中国やインド、ブラジルなどで急速に広がっていくと予想されている。一方で、車載型では世界で約1000万台の販売台数のうち、日本が400万台を占める。こちらも欧米市場に広がっていくのか。小さな巨人、トムトムに、これからも注目が集まりそうだ。

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