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[Part1] 増加する宇宙ごみ 監視へ動く国際社会

 

宇宙で今、大きな問題になりつつあるのが「スペースデブリ」と呼ばれる宇宙ごみだ。米航空宇宙局(NASA)が電算処理して公表している画像は、まるで無数のカビの胞子が地球にまとわりついているように見える。
宇宙ごみの実体は、寿命の尽きた人工衛星やその部品、ロケットの残骸、破片など。大きさも種類もさまざまだ。

宇宙ごみは、小さな破片からこんな「粗大ごみ」までさまざまだ photo:US AIR FORCE

NASAで宇宙ごみ対策の責任者を務めるニコラス・ジョンソンによると、観測可能な直径10cm以上のものだけでも約1万9000個。直径1mm以下の微少ごみも含めると数千万個に及ぶ。

問題は、こうしたごみが地球のまわりを高速で周回していることにある。人工衛星が密集する高度2000km以下の低軌道だと、ごみのスピードは鉄砲の弾より速い秒速8kmに達する。小さなものでも宇宙船や人工衛星に衝突すれば、穴があいて深刻な事故を招く。
ジョンソンは「国際宇宙ステーション(ISS)は1cm大のものなら衝突に耐えるし、それ以上のものなら回避する策を備えている」と言う。

だが、2009年2月には米国の衛星携帯電話用の衛星イリジウムが、宇宙ごみ化していたロシアの衛星コスモス2251と衝突。翌3月には別のごみが接近するかもしれないとISSに滞在中の飛行士3人が緊急脱出用の宇宙船に避難する騒ぎもあった。宇宙ごみの数は増加の一途で、衝突の危険性はますます高まっている。

深刻化する事態に、各国は監視強化や低減に向けた努力を重ね始めた。
中でも、監視能力の高さで群を抜くのは米国だ。冷戦時代、ソ連の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を監視するためにつくった米軍の宇宙監視網(SSN)がベースになっている。

NASAや米軍はSSNを使って10cm以上の物体を常時監視している。世界各地においた高性能レーダーや大型望遠鏡を駆使。集めたデータをもとに宇宙空間のどこにどのような物体があるのかをカタログ化し、1ケタの数字まで正確に公表している。米国に次ぐ監視能力をもつのはロシアだが、米国ほどのデータは開示していない。

日本では、岡山県に民間団体が運営する「美星スペースガードセンター」(井原市)など2カ所の観測所があるほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)も長野県の観測施設で微小ごみを検出している。

国際協力も行われている。1993年には米国の働きかけで「国際機関間デブリ調整委員会(IADC)」という枠組みが発足。国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)でも、宇宙ごみ低減のためのガイドラインを設けるなどしている。

IADCの活動は活発で、欧米や日本、中国などの宇宙機関が加盟し、ごみに関する情報交換を行ったり、衛星やロケットの設計、打ち上げ段階からの低減策を盛り込んだガイドラインを02年に採択したりしてきた。

ただ、いずれも国際条約ではなく、宇宙ごみ規制のための法的拘束力をもたないという弱点があり、新たな枠組み作りの必要性が指摘されている。

(谷田邦一)

(文中敬称略)

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