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[Part3] 自衛隊も宇宙利用へ

 

日本を射程に収める北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」(射程約1300km)。日本に向けて発射された場合、日本海上空で最高高度約300kmに達した後、放物線を描いて落ちてくる。これを迎撃するには、ミサイルが大気圏外を移動する数分間が勝負となる。落下時に比べ飛行速度が格段に遅いからだ。

2009年10月27日午後6時すぎ、ハワイ・カウアイ島にある米軍のミサイル試射場から「標的」の弾道ミサイルが発射された。その約7分後、管制室からアナウンスが流れた。「マーク・インディア(迎撃成功)」

島の西数百km沖に浮かぶ海上自衛隊のイージス艦「みょうこう」が発射した迎撃ミサイルが、大気圏外の約160km上空で標的を射抜いた瞬間だった。

自衛隊による迎撃実験は、前回の失敗を含め今回でまだ3度目。「標的発射のタイミングや方角がおおむね想定できる基本編」(防衛省幹部)のレベルだ。北朝鮮が弾頭の数を増やしたり、軌道を変えて飛ばしたりした場合にはまだ十分に対応できない。自衛隊の宇宙利用はまだ緒についたばかりに過ぎない。

日本の宇宙利用は長らく「非軍事」に徹してきた。宇宙の平和利用を定めた1969年の国会決議を理由に、自衛隊は宇宙から締め出されてきたからだ。85年、一般利用されている衛星などに限り利用可との政府見解がまとまり、第一歩を踏み出す。本格利用が可能になったのは08年5月だ。安全保障分野での宇宙利用をうたう宇宙基本法が成立した。

自衛隊の宇宙利用は現在、情報収集、通信、測位、気象、ミサイル防衛の5分野にわたる。中でもノドンに対する弾道ミサイル防衛(BMD)の導入で、自衛隊は創設半世紀にして初めて宇宙を「主戦場」にする時代を迎えた。

相手のミサイルが発射される瞬間を感知するのに欠かせないのが、早期警戒衛星(DSP)だ。日本は現在、その機能を米国の衛星に依存している。地上レーダーで探知する能力はあるものの、地球は湾曲しているため上昇中のミサイルが地平線上に顔を出すのに数分かかる。分秒単位を争う迎撃にとって、この数分の開きは致命的な遅れにつながる。

政府の担当者の間では、発射のタイミングを正確にとらえるためにも、DSPなど「宇宙の目」の役割は重要と考えられている。このため、日本でも自前のDSP導入に向けた研究が始まった。

しかし課題は山積している。DSPにはミサイルの熱源をもとに瞬時に種類や能力を割り出し、弾道を緻密に解析できるソフトウエア開発が欠かせない。しかし日本にはそうしたデータの蓄積がない。しかも早期警戒システムには衛星だけでなく、集めた情報を部隊間で共有する巨大なネットワークの構築も必要になる。

03年から打ち上げが始まった政府の情報収集衛星に投じられた経費は現在、7000億円近い。開発費を含めればDSPも数千億円かかると推定されており、国民の納得が得られるかどうかという新たな問題に直面する。

(谷田邦一)

(文中敬称略)

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