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[Part2] すべての衛星を把握・監視 他を圧倒する米軍システム

 

米ソ間の軍拡競争が続いていた1967年、国連で宇宙の軍事化を規制する「宇宙条約」が発効し、大量破壊兵器を地球周回軌道に乗せることが禁じられた。だが、地上の戦争を支援する宇宙システムの配備は合法とされた。

ここに他を圧倒する軍事システムを築いてきたのが米国だ。82年には、空軍内に「宇宙軍」(司令部・コロラド州)を創設。「宇宙の支配」をスローガンに、システム開発や整備を推し進めてきた。

現在の主な任務は、軍事衛星の運用や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の打ち上げ、世界各地で発射されるミサイルの監視など。その守備範囲は広い。

戦場に向かう無人攻撃機リーパー  photo:US AIR FORCE

ロシアや中国も、弾道ミサイルや軍事衛星を運用する専門の宇宙部隊をもっている。とくに冷戦終結後、存在感を増してきたのが中国。後発ながら、2007年に自国の衛星を弾道ミサイルで撃破する実験に成功、宇宙の軍事利用が再び過熱し始めた、と世界を緊張させた。

先月、カリフォルニア州にある宇宙軍の拠点、ヴァンデンバーグ基地を訪ねた。50年代以来、開発などの目的で約1800の弾道ミサイルを打ち上げた発射場として有名だが、他国の衛星を含め宇宙空間のあらゆる物体を監視・分析している中枢としても知られる。

応対してくれた統合宇宙作戦センターのリチャード・ボルツ大佐によると、米政府が運用する衛星は現在、軍用・民生用合わせて約150機。偵察や通信、測位など5分野にまたがり、民間運用のものも含め全世界で活動中の衛星約1300機の10%近くを占めているという。
「ここではGPSの精度を維持する作業のほか、衛星や宇宙ごみ(スペースデブリ、本編4-1参照)など宇宙空間にある約43万の物体を、世界29カ所のレーダーや望遠鏡で常時監視・追尾し、その情報をコンピューターで分析している」

画面を通じてパイロットは遠くの地を「飛ぶ」 photo:US AIR FORCE

関係者の間でもっとも旬な話題は、2009年12月5日に打ち上げられた最新の軍用通信衛星「WGS」だ。
07年から打ち上げが始まり、13年までに6機を配備する計画。遠隔地を結ぶテレビ会議や動画で配信される作戦情報など、米軍内の通信需要は増加の一途だ。

WGSの通信容量は、現在使っている通信衛星群「DSCS」に比べ16倍に膨らむとの推定もある。
ボルツは「具体的には言えないが、指揮官と戦場の部隊を結ぶ広域で大容量の通信を可能にする。格段の能力アップが図れる」と話す。

基地取材の帰り、ロサンゼルスでWGSを製造しているボーイング社の衛星部門に立ち寄った。
空港そばに巨大な工場とビルが群立する。衛星部門を担当するマーク・スピワック部長が、WGSの仕組みや特徴を詳しく説明してくれた。

PRビデオには米軍が使うフレーズ「情報の優越(information superiority)」が繰り返し登場する。なぜ「優越」が重要なのか。改めて尋ねると、スピワックはこう答えた。
「戦うにせよ、戦わないにせよ、相手のことを知っているほど有利になる。情報は早ければ早いほどいい。そのために衛星が用いられる。それが米兵の多くの命を救うことにつながる」

(谷田邦一)

(文中敬称略)

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