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[Part1] 操縦席は戦場から1万km 衛星駆使した無人戦闘機

 

衛星システムは、もともと軍事のために開発された。先端技術の発達に伴い、軍の依存度は高まる一方だ。

米ラスベガスの北約70km。山岳地帯の一角に、クリーチ基地はある。所属部隊の別名は「まばたきしない目(unblinking eye)」。パイロット約250人が、24時間体制で勤務する。

ただし、ここには戦闘機や爆撃機は1機もない。彼らが乗り込むのは、基地内に設置された移動式コンテナだ。人工衛星を経由して最新鋭の無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を遠隔操作している。実際の戦場は、約1万2000kmの彼方にある。

ここでの主役は偵察機「プレデター(略奪者)」(全長約8m、全幅約15m)と、ひと回り大きな攻撃機「リーパー(死に神)」の2機種。オタマジャクシを思わせるのっぺりした機首部分、下方に伸びた2枚の尾翼が特徴だ。

GPSに誘導されて高度3000mから高性能カメラで地上を捕らえる。標的であれば追尾開始。音もなく頭上に近づき、搭載した精密誘導兵器で攻撃する。

2009年5月、これまでほとんど知られていなかったこの基地の様子が、米国のテレビ局CBSの人気番組「60ミニッツ」で紹介された。

コンテナ内の操縦席に座っているのは、F16戦闘機のベテランパイロットたちだ。操縦桿や計器類は航空機のそれだが、異なるのは前面に設置された複数のスクリーン。衛星経由で情報をやりとりしながら、パイロットとセンサー担当員が2人1組で操作する。

スクリーンに暗視装置で撮った夜間の戦地が映し出された。数人の男たちが暗闇の中で路上にうずくまり、路肩爆弾(IED)のようなものを据え付けている。作業を終えて立ち去ろうとした瞬間、UAVからミサイルが発射された。画像は激しい土煙に覆われた。

戦闘機との違いについて問いかける女性リポーターに、アフガン作戦に従事するパイロット(中佐)が答える。
「高速で飛ぶわけでも重力加速度を感じるわけでもない。でも心理的な興奮や反応はまったく同じだ」
リポーター 「ストレスを感じる?」
中佐 「ひどいものさ」

攻撃型UAVは、誤爆で市民を巻き添えにするなどして、国際社会から批判を浴びてもいる。

記者もクリーチ基地を取材しようと米軍に申し込んだ。聞けば、世界中のメディアから取材要請が殺到しているという。待たされること1カ月。オバマ政権が掃討作戦を強化した11月半ば、ようやく短い回答が届いた。
「近く作戦が始まるので、すべての取材対応を延期する」

米軍がUAV開発に本格着手したのはベトナム戦争さなかの1960年代にまでさかのぼる。だが、今日のような姿へと性能を引き上げたのは、測位衛星や通信衛星といった宇宙インフラやコンピューターの発達だ。

米軍が高高度からの広域偵察に用いている大型機「グローバルホーク」(全長約13m、全幅約35m)の仕組みを、日本でUAV開発に取り組む防衛省技術研究本部の専門家たちに解説してもらった。
(1)飛行制御や精密誘導用のGPS(2)大容量の画像伝達が可能な通信衛星(3)操縦など指揮命令用の通信衛星(4)バックアップのための衛星――と、少なくとも4種類の衛星を使っているという。

防衛省の技術幹部の一人は言う。
「軍事用のUAVで米国に追いつくのはどの国も不可能だ。地球の裏側までカバーできる自前の衛星通信ネットワークと、高い航空機開発能力の二つを備える必要があるから。そんな国は世界で米国しかない」

(谷田邦一)

(文中敬称略)

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