TOPへ
RSS

[Part2] USA/「無償提供の方針変えない」 先行するGPSは次世代へ

 

「米国は、これからもこの分野でリードし続けたいと思っている」

2009年12月初め、米コロラド州にある米空軍基地。ロシアや中国、日本といった海外メディアの記者を前に、GPSを担当するデビッド・バックマン大佐は繰り返した。「競争など起きえない」と質問をはねつけんばかりの雰囲気だ。

1990年代半ば以降、安定して測位衛星システムを完全運用できているのは米国だけ。そんな実績が、バックマンの自信の背景にはある。

最新型のGPS衛星「ブロック2F」の模型。ボーイング社が製造する実物は、この4倍の大きさがある=12月2日、米コロラド州のピーターソン空軍基地で、勝田敏彦撮影

欧州や中国が独自の衛星を打ち上げたとしても、世界をカバーするまでには相当の時間がかかる。設計通りに電波が送信されるかどうかもわからない。まずはお手並み拝見、ということらしい。

GPSの強みは、なんと言っても「誰に対しても無料」な点だ。

もともと世界中に展開する米軍のためのシステムとはいえ、運用・開発には年間約9億ドル(約800億円)もかかっている。ただで他国にカーナビなどの商業利用を許すのは、明らかに不利益だ。実際、日本など外国のカーナビメーカーの製品は、米国の市場も食っている。

米国は、GPSの活用で世界が経済発展すれば米国の繁栄にもつながる、と説明する。だが、別の理由もある。空軍士官学校で宇宙・防衛政策を研究するロジャー・ハリソン博士が指摘する。

「米国は他国にはあまり測位衛星を開発してほしくないと思っていた。打ち上げコストが下がったこともあって宇宙は衛星で混雑してきているし、電波の周波数にも限りがあるからだ」

無料で運用している限り、GPSを上回る性能を実現しなければ後発組に市場参入の余地は少ない。限られた資源は米国が独占できるという考え方だ。

実際、米国は当初、ガリレオ計画に反対していた。米航空宇宙局(NASA)勤務時代に欧州との交渉を担当したジョージ・ワシントン大学のスコット・ペース教授は言う。

「欧州が『ガリレオをやる』と言ってきたとき、『GPSは今後も無料サービスを続ける。もっと別のことにお金を使ったらどうか?』と言った。だが『どうしてもやりたい』と。『それならどうぞ』となった」

先行逃げ切りを狙う米国は、「ブロック3」と呼ばれる次世代GPSの開発を進めている。現在のGPSの位置精度は4m程度。次世代ではこれが1m以下に向上し、他からの妨害も受けにくくなるという。最初の衛星の打ち上げは2014年ごろになる見通し。今後約30年で約60億ドル(約5500億円)の経済効果が世界的に見込めるという。

ピーターソンく軍基地の中にある米宇宙軍本部。GPSの運航本部は、ここから東へ15キロほど離れたシュリーバー空軍基地のなかにある=勝田敏彦撮影

懸念材料がないわけではない。

米議会の政府監査院(GAO)は09年5月、「予算不足などで更新する衛星の開発が遅れ、早ければ来年から精度低下に陥る可能性がある」などとする報告書を公表した。

空軍は「十分に予算措置されており、衛星打ち上げスケジュールも予定通り。GAOの報告書には同意できない」と反論する。オバマ政権もGPSの運用や更新は重要と考えているが、議会には国防総省が管理するGPS予算を削減しようとする動きもある。

カーナビメーカーの中には、ガリレオなどに対応しようとの動きも出ている。ただ、米国側は今のところ、欧州がガリレオの仕様に関する詳細な情報をあまり公開していないことに神経をとがらせている。ガリレオ対応端末の製造などで欧州のメーカーが有利になるような政策がとられた場合、貿易摩擦に発展する恐れもある。

(勝田敏彦)

(文中敬称略)

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

世界のどこかで、日本の明日を考える 朝日新聞グローブとは?

Editor’s Note 編集長 新創刊のあいさつ

このページの先頭へ