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[Webオリジナル]インタビュー 空を語る

[第5回]

「必要なのは消費者利益に資する航空会社。日本の会社である必要はない 」

塩谷さやか 桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授

海外で成長を続ける格安航空会社(LCC)。そのビジネスモデルは、日本の航空業界にどんな影響をもたらすのか。日本航空(JAL)出身で、航空会社の経営に詳しい塩谷さやか・桜美林大准教授にLCCの成功の理由と問題点を尋ねた。

(2009年10月26日、聞き手・野島淳、佐々木学)


しおたに・さやか
JALで国際線の客室乗務員として勤務。在職中に米フォーダム大学、ニューヨーク大学大学院に留学。帰国後も、勤務の傍ら早稲田大学大学院で経営学修士(MBA)を取得、同大学院博士後期課程でも学び、博士(学術)を取得。2005年、JALを退社し、桜美林大学の専任講師に。2009年から現職。著書に『新規航空会社 事業成立の研究-日本におけるビジネスモデルと航空政策の革新』(中央経済社)、『現代の航空輸送事業』(同友館)など。

――LCCが海外で勢力を伸ばしているのは、どういう理由からでしょうか。

塩谷さやか 徹底的な低コストを実現しています。例えば、マレーシアのエア・アジアの場合、JALの約3分の1のコストで飛んでいます。

多くのLCCで共通するのは、①都心部から多少離れているために空港使用料が割安な2次空港を拠点とする②大手のように大きさの違う多種類の航空機を抱えることはせず、機種を統一して特定路線を頻繁に運航する③飲料や娯楽といった機内サービスをなくしたり、有料にしたりする④チケットの販売はウェブ経由のみとし、旅行会社などの窓口は使わない、といった点です。こうして運航や販売のコストを落とし、大手よりも安い運賃を打ち出すことに成功しています。

――安さだけが成長している理由でもないようですね。

塩谷 欧米の成功しているLCCは、「顧客にも従業員にもフレンドリー」といった企業の理念やイメージをうまく打ち出したり、革張りの座席や1席に1台のテレビ画面を付けるなど大手に劣らないサービスを特徴にしたりして、「LCC=チープ(安っぽい)エアライン」という印象を打ち破ったところがあります。こうして、大手から顧客を奪うだけでなく、これまで飛行機を利用しなかった人たちも取り込んで、社会的貢献度が高いことも売りにしています。こうした点は、日本の新規参入会社がまだ弱い点ではないでしょうか。

――日本では、新規参入した航空会社の経営は順調と言い難いようです。

塩谷 1998年にスカイマークとエア・ドゥが規制に挑戦して、それぞれ、羽田~福岡、羽田~札幌に割安運賃で参入しました。しかし、両社は苦戦しました。日本の場合、東京一極集中なので、羽田空港の発着枠が確保できるかどうかが死活問題になります。新規会社が参入した当初は、運輸省(当時)から羽田の発着枠を十分に割り当てられなかったことに加え、整備の委託先が大手航空会社しかなくコストが高くなったことなど、様々な要因が加わって、経営が苦しくなりました。

――来年、羽田に4本目の滑走路がオープンし、発着枠は現在の年約30万回から40万7000回に増えます。不足は解消されるのでしょうか。

塩谷 そうなっても、まだ全体的に需要に対する枠の不足は続くと言われており、根本的な問題解決にはなりません。しかし、現在は、新規に参入した航空会社に対して、枠が優先的に配分されるようになり、自社整備も可能になってきたので、状況は改善するでしょう。

むしろ、新規参入各社の苦戦を見てきた投資家が、新たな投資に対して二の足を踏んでいて、十分な資金調達ができないことの方が問題です。

資金調達の難しさは、今後の新たな参入も阻んでいます。航空会社は、ある一定規模までは規模の経済が働き、運航の規模にかかわらず、航空機リース費用や整備費、空港施設の賃借料、広告宣伝費などの固定費がかさみます。このため、事業を始める段階で50億円程度の資金を持ち、最低でも4―5機くらいで運航しないと難しいのです。新規参入者を異端児扱いする傾向が日本では強いといったこともあります。

――利用者からすると、海外の航空会社でも不都合はないのではないでしょうか。

塩谷 日本では、航空会社に対する外資規制があるため、外国企業が日本の航空会社の株を持てる比率は3分の1以下までです。新規会社の資金調達が楽ではない現状を考えると、外資規制を緩和してリスク選好型の外国の投資家を呼び込むことが必要でしょう。

また、国内線については、「カボタージュ規制」で、外国航空会社の運航が認められていません。米国も国内線は開放していませんが、今後、日本は真剣に考えてもよいでしょう。

必要なのは、消費者利益に資する効率のよい航空会社であって、日本の航空会社である必要はありません。JALに公的資金を注入して延命しても悪循環になるだけ。優良な資産を残して、再生を前提にいったん法的整理する方が賢明です。

――日本発着の国際線では、アジアのLCCの参入が進むでしょうか。

塩谷 日本でも、都市近郊の小規模空港で、LCCを積極的に誘致すれば良いのではないでしょうか。札幌近郊の丘珠(おかだま)、神戸、茨城、広島西といったところが候補でしょう。こうした空港を活用するには、経営を民営化することも一つの策です。利用料を抑えて大規模空港との差を打ち出せば、コストに敏感なLCCも入ってくる可能性があります。

ただ、LCCが就航したからといって、地域の活性化が進むわけではありません。海外の旅行客に対して、東京以外にも目を向けてもらうよう地域の魅力を訴える工夫が必要なのは言うまでもありません。

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