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[Webオリジナル]日米最高裁をよく知るブックガイド

[第3回] 米連邦最高裁の議論の道のり

 

3回目は、米連邦最高裁、さらには米国の司法のあり方について知るための本をピックアップしてみた。

現在と歴史

最近の米連邦最高裁の動きを概観するには、『衆議のかたち アメリカ連邦最高裁判所判例研究(1993~2005)』(藤倉皓一郎/小杉丈夫編・東京大学出版会)がよい。

 

学者や弁護士、裁判官らによる研究会が米連邦最高裁の判例を検討してきた成果を集めた本編はかなり専門的だが、「序説」の部分は、米連邦最高裁と日本の最高裁の構成と現状を対比させ、裁判官の顔ぶれ、判決が形成される過程、それぞれの問題点と改革の方策、などがわかりやすくまとめられている。
本書の研究の対象となっている期間のうちほとんど(94年から05年まで)は、米連邦最高裁の9人の裁判官の顔ぶれが変わっていないため、どのようなテーマの時にどのような裁判官の組み合わせで多数が形成されるのか、といった点を比較しながら読み進めると興味深い。続編の出版も検討されているという。

 

米連邦最高裁が200年以上の歴史の中でどんな判決を出してきたのか。それを知る基本になるのが、『英米判例百選』(藤倉皓一郎・木下毅・高橋一修・樋口範雄編・有斐閣)だ。「議会の議席配分と『1人1票』原則」「名誉毀損と言論の自由」「死刑の合憲性」など、いまの日本の問題に直結するテーマを、米国ではどう考えてきたのかを知ることができる。

米国の連邦や州の裁判所、裁判官、弁護士について概観する『現代アメリカの司法』(浅香吉幹著、東京大学出版会)も参考になる。

 

米国に起きたさまざまな問題を、連邦最高裁はどのように解釈し、解決してきたのか。草創期から21世紀まで、「最高裁判決が作ってきた米国史」を書いたのが、『憲法で読むアメリカ史(上)・(下)』(阿川尚之著、PHP新書)だ。
上巻は南北戦争まで。下巻は19世紀後半から現代まで。それぞれの時代の代表的な判決をほぼ網羅し、著名な判事たち同士の考え方の違いをくっきりと浮かび上がらせている。判決が出された歴史的文脈や同時代的背景も書き込まれており、わかりやすい。

 

特集では、米連邦最高裁の議論は、死刑を巡っても活発であることに触れた。この問題について深く知りたい読者には、大冊だが、『陪審と死刑――アメリカ陪審制度の現代的役割』(岩田太著、信山社)が参考になる。

連邦最高裁は、死刑の運用に対してどのような規制を示してきたのかや、連邦最高裁は死刑事件を判断する上で陪審にどのような機能を想定しているのかについて、詳細に述べられている。
裁判員制度が始まり、死刑を下すかどうかの判断に市民が否応なくかかわることになった日本人にとっても、本書のテーマは他人事ではない。

 

米国の司法を担う法律家たちはどのようにものを考えているのか。その秘密をわかりやすく解き明かすのが『手ごわい頭脳 アメリカン弁護士の思考方法』(コリン・ジョーンズ著、新潮新書)だ。著者は、NY州などの弁護士資格を持つ同志社大法科大学院教授。問題になりそうな部分を識別し、事実を見つけ出し、類推で物事を考える――。そうした思考様式を理解することが、米国の著名な判例を読み解く手がかりになるということも教えてくれる。

勝ち目のない訴訟が起こされるのは、なぜか? 訴訟が和解で決着せず、トライアルにまで至る場合があるのは、なぜか? 米国の民事訴訟をめぐるそんな疑問を新しい角度から考えるのが『民事訴訟法の法と経済学』(ロバート・G・ボウン著、細野敦訳、木鐸社)だ。ディスカバリーやクラスアクションなど、米国特有の制度についても分析されている。もともとはロースクールの学生向けの入門書で、可能な限り数式を使わず、わかりやすく書かれている。

(山口 進)

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